6 幼なじみとデートしよっ
「待った?」
駅前で、そう声を掛けられる。
「いや、別に。」
俺はなるべく自然に笑いながら、振り向く。
「………これ、やる意味あった?一緒に来たよね?」
ジト目で悠加が見てくる。
「いやなんとなく。」
せっかく出掛けたんだから、こういうあるあるをやってみてもいいじゃないか。
夏休み始まってから丁度一週間、俺と悠加は駅前のデパートに来ていた。
なんでこんなことになったかと言うと、メーセージアプリで突然呼びかけられたこのメッセージが原因だ。
『2年A組、海に行きたい人集まれ。てか、行きたくない人も半強制。日時と場所は後々。取り敢えず水着を用意すること!!』
別に俺はこんなの無視してよかったんだが、中山が行く気満々で、悠加さえもノリ気だったため、じゃあ俺だけ行かないのはなんか寂しいとなって、参加することになった。
で、水着が必要になったんだけど、俺は学校指定のVパンしか持ってないし、悠加も新しいのがほしいということで買いに来たのだ。
ちなみに中山は、今日部活&水着を謎に大量所持してるらしいから来ていない。
あいつ、5枚くらい水着の写真撮って送ってけどき、なんでそんなに持ってんだろう?
「早く終わらせたいから、さっさと行こう。」
コレはデートなら99%男のセリフだけど、今回の場合俺のセリフではない。
悠加のセリフだ。そう、何を隠そうこの女買い物が嫌いなのだ。
彼女いわく、『長時間見て結局買わないのに、意味ある?』だそう。
何度か一緒に買い物行ったけど、俺を悠加が待つなんてこともざらにあった。
「あいよ。あっでも、帰りに本屋寄っていい?ラノベの新刊買いたい。」
俺は通りかかりに見えた、本屋の看板を指して言う。
「別に僕だってその位良いよ。ほら、早く歩こう。」
悠加は俺の裾を引っ張りながら、すでに歩きだしていた。
「ちょまっ……」
あれ、これ完全に立場逆なのでは?
俺はズルズルと引っ張られながら、そんなことを思う。
◇ ◇ ◇
「水着屋ってここか?」
ネオンで大きく『水着』と書かれたお店の前で立ち止まる。
隣には『ゴスロリ』。反対側には『ぬいぐるみ』。なんだろう、もう少し場所を変えられなかったのかな?
「そうみたいだね。ほら、入った入った。」
ここでと悠加は急ぐらしく、俺の背を押して強引に店の中に入らせる。
こういうお店は女の人向きが多いけど、ここはほぼ半分半分で男物もある。
別に服にこだわりもないから、水着にも当然こだわりもクソもないのだけど、種類が多いのは嬉しい。
「まずはお前からでいいぞ。」
先にこいつに選ばせないと早くしろとうるさいので、お先にどうぞする。
「分かった、僕からね。」
頷いた悠加は、スタスタと女物の小さめコーナーに歩いてゆく。
「えっと……………。」
無難な物が置かれた棚の前で、考えることほんの10秒。
「はい、ゆうとのやつ買いに行こう。」
パッと水着一着手に取ると、悠加はすでに俺の背後に回って押し始めていた。
「分かった分かったってば。」
あまりにグイグイ押すので、俺は後ろに手を回して悠加の手を叩いてギブを表明する。
「はよ、はよ……。」
押すのはやめてくれたけど、小声で呟かれる。なんだろう、めっちゃ怖いんだけど。
「うーんと…………。」
俺も無難なのがいいな。えっと、色は………。
「これでいいか。」
紺色の面積が大きめの、無難な水着を手にとってそうつぶやく。
「うん。良いと思うよ、似合ってる。」
悠加はそれを見て、笑顔で言う。
「そ、そうか?じゃあこれでいい。」
こいつも帰りた意欲満々だけど、一応女だから、褒めてもらえたのならばこれでいいだろう。
「うん!じゃあ会計だね!!」
太陽と比喩するのがこんなに似合うことはないとばかりに、満面の笑みを浮かべる悠加。
「なんでそんな嬉しそうなのか、俺にはわからないよ。あっ、悠加」
スタスタと会計へと一直線の彼女に声をかけて止める。
「何?」
悠加も常識はあったようで、止まって振り向いてくれた。
「俺が払うから。」
俺は彼女との距離を詰めながら言う。
「えっ?」
意味が分からないと俺を見上げる悠加。
「いや、俺一人じゃ買いづらかったし、そのお礼で。」
水着を奪い、俺は悠加を追い越して歩いて行く。
「いや…………。うん、ありがと!!」
背中越しに、そんな嬉しそうな声が聞こえた。
「どういたしまして。」
ここで『いや悪いよ』とか言わずに、素直に感謝する悠加のそういうところが、俺は好きだ。
☆今日の一言☆
本屋)寄るの忘れてない?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
下の☆☆☆を押すだけなので、何卒評価宜しくお願いします!
コメントも頂ければ本当に嬉しいので、些細なことでも書いて頂けると幸いです!
では、今後ともどうぞご贔屓に。
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