第5話

302、302、私は繰り返した。

ホテルの入り口で、何回も看板を見上げた。

る・テラスよね?うん、ここだ。302、302,

急いでエレベーターに乗ろうとする私に、受付のおばさんが、「何号室?」っと聞いて来た。「あっ、302号室です。入る時言うんですね、すいません。」「ちょっと待って、今確認するから。」「はい。」私は、入り口でお店の名前と部屋番号を言ってね!とママからそう言えば、言われてたなと思いながら待った。

「もしもし、お連れさんいらっしゃいました。」302号室は多分3階だよななんて思いながら、キョロキョロエレベーターを探した。

「はい、そこ曲がったとこにエレベーターあるから。」「ありがとうございます。」私はエレベーターで3階に向かった。

鉄の扉は凄く大きく見えたけど、とにかくドアをトントンしてみた。

全然ドキドキはしなかった。

どんな顔の人が出てくるんだろうって気になった。

ドアを開けたのは、白髪混じりの、お髭で眼鏡で少し小太りというか、筋肉質のおじさんだ。

まぁ、私もおばさんだけど。たぶん、同じぐらいか、少し上の人だった。

その人は、裸で腰に小さいタオルを巻いてるだけだった。

話すも何も、その人は急に抱きついてきて部屋に連れて行った。

私は、荷物も気になったし、ママに部屋についた事を、電話しなきゃなかったので、そればかり気になった。

キスをして、服の上から胸を掴んできて、スカートをたくし上げてきた。

私は「すいません、ママに電話を」と言ったのに、そのまま服をどんどん脱がされて荷物を掴んだまま、ブラウスの前をはだけて、ブラジャーは、上に引き剥がされ、スカートとパンティは半分まで脱がされてベットでずっと上に乗られて、キスされていた。私はちょっと、悶えたけど。

暑くなってきて、だいぶ時間も過ぎたので

「すいません、電話を…」

その時初めて、身体が離れてその人はトイレに行ったので、ママに電話した。

「もしもし、せいこさんですね、何分になりますか?」私は、あっ時間をお客様に聞くんだったと焦って、トイレの方を見たらその人がパーと一本指を出してたので、「60分です。」ってママに言った。ママは「60分ですね。では、お願いします。」と電話を切った。

「初めてなんだって、こういう仕事?」急に普通に話されて、私は少しほっとした。

「はい、そうなんです。」

「なぜまた。」「離婚して、昼の仕事も2つしてますけど、その日の現金が欲しくて、お給料だと1ヶ月に一度なので…」

「そうか、頑張ってね。」

私は、なんだ優しい人じゃんって思った。


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