遊びについて-1

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あそび【遊び】〘名〙アソビ

①楽しいと思う事柄を行って楽しむこと。遊ぶ。

②気持ちに余裕があること。

③物事が窮屈でなく余りがあること。

国語辞典オンラインより


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ぼくの通っていた学校には歩いて5分ほどのところに田んぼがあって、中学生1年生と高校1年生がそこで稲作をする風習があった。


田植えの季節、水の張った田んぼはどろどろとしている。一歩田んぼに踏み入れ、油断すると簡単に足をとられる。陽光が燦々と降り注ぐなかで身動きがとれなくなってしまうのだ。しまった!と思っても遅い。足を引き抜こうと頑張って動かしてみようとするけど少しも動かない。泥が足に纏わりつき強く掴んで離さない。


暫くの間じたばたしてみて駄目だ、となると今度はその状況を受け入れようという気持ちになってくる。抗わずに身体の力を抜くと泥が冷たくて気持ちいい。己の身体が田んぼと繋がっているような心地に包まれる。そうしているうちに足を掴んでいた泥が緩み、ぽっと足が抜けることがある。


抜け出そう抜け出そうと躍起になればなるほど砂の粒子どうしは強く結びついて離してくれない。その状況を受け入れて楽しんでいると次第に砂の結びつきは弱くなり、ゆとりがうまれてくるのだ。


困った、しまったという状況に際し、闇雲に動いていても事態が膠着したまま動かないことがままある。むしろそうなってしまったことを受け入れ、楽しみ、自然体で在り続ける態度。なにをへらへらと笑っているんだ、ふざけているんだと怒らない度量。それが遊び。

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