ポケモン GOについて
ポケモン GOというゲームが一昔前に流行った。
リリース日が予告されていなくて、7月下旬のある日に突然友だちが騒ぎ出したのを覚えている。もう5年も前の話になるか。
当時、僕はスマホを持っていなかったから、放課後の遊びがポケモン集めに変わってしまったことで、つまらない思いをしていた。
ポケモン GOは結局スマホを買ってからもやっていないから、未だによく分かっていないのだが、実際のお店や駅といったスポットがゲーム内のジムやポケストップの役目を果たすARゲームだったはずだ。
そしてポケモントレーナーに自分自身がなって、ポケモンを集め強化していくという設定である。ポケモンファンにはなかなかそそる話に思える。
しかし、これがあまりポケモンネイティブ世代には当たらなかった。いや、リリース直後、社会現象になるまでヒットしたのは事実である。しかしそこからの萎みが早かった。先述の友達も半年を過ぎた頃には大多数が飽きていた。
そもそもゲームを進めていくうえで歩いてさまざまな場所に行かなければいけないというのが、次第に億劫になってくる。それに、ゲームの設定があまりに単純でコレクション欲を刺激する以外には、ゲーム性に欠ける。
なぜポケモン GOの話をしたかというと、僕の父親がいまだに熱心なポケモン GOプレイヤーなのだ。
父親は当時、スマホの操作すら怪しい機械音痴で、もちろんスマホゲームなんかやったことがなかった。リリース直後は特に強い関心を寄せる訳でもなく、むしろアイテムゲットのためにお店や神社に大量に押し寄せる若者のニュースに嘆いていたくらいである。
それが、2カ月くらい経ったある日、父親は新しいスマホをぶら下げて帰ってきた。
いわゆる2台持ちのプレイヤーにまでなってしまったのである。
父がニュースに嘆いた1週間後にポケモン GOを始めたことは知っていた。会社の後輩にはまっている人がいるらしく、その人とのコミュニケーションのために始めたと夕食の席で話していた。もともと若いその社員とのコミュニケーションに悩んでいるという話も聞かされていたから、ポケモン GOは彼との会話の絶好の話題だったのだろう。
そのうちに後輩の彼がやめてしまったと悲しそうな顔をして話していたが、後追いの父のほうがやめる気配はなく、むしろ休日にわざわざポケモン GOのために外出することもあった。
まぁそれまで休日は家にこもっているような人で、ビール腹が育ってきていたから、外に出て歩いてくるというのは良いことではあった。
とはいえ、2台持ちまでいくとなかなかである。
正直、電車で2台のスマホを操作してポケモン GOをしているおじさんを見ると少し引いてしまっていた。
スマホを左手に持ち、右手の人差し指で操作するおじさんに自分の父親が重なり、吐き気に近いかなり強い嫌悪感を覚えた。
なにがそんなに嫌なのかは自分でもよくわからない。人の趣味に文句を言うような人のほうこそ僕は嫌いだから、他人がするゲームのことをとやかく言うつもりは毛頭ない。
ただどうしても、ポケモン GOへの異常な抵抗感だけが根強くある。
それからというもの、体重計の置いてある脱衣所から「体重減ってる!」という父の自慢げな声が飛んでくるたびに吐き気を我慢しなければいけなくなった。
今では、一日を家でぐうたら過ごす不健康な父のほうが数百倍ましだと思う。
(続く)
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