第一日目
壱. 私と一緒にいたのは
「さて、皆な揃ったわね、じゃ、最初は私から..」
「これは、私が小さい時の話。そうね、大体、小学校低学年の頃。
当時、私には友達がいたのよ。ここではわかりやすくM子ちゃんっていう友達がいたの。M子ちゃんは私と違って引っ込み思案でクラスの中では大人しい子だったの。当時の私はそのM子ちゃんといつも一緒にいて、遊んでいたの。
その日も、学校終わりに、M子ちゃんと近くの公園で遊んでいたの。砂場でお城を作ってたり、ブランコで遊んだりして。いつものように遊んでいたの。そしたら、
チャン、チャン、チャンチャン...。
って、夕方のチャイムがなったの。もう帰る時間だぁって思ってM子ちゃんに、
『M子ちゃん、もうチャイムなちゃった。もう帰ろう?続きはまた明日で』
いつもなら、一緒に帰るんだけど、その時は
『嫌だ。家に帰らない』
って、駄々をこねるのよ。そんなことは一度もなかったから、私は驚いて。
『なんで?』
って聞くと。
『おうちが赤くなって黒くなるから....』
ってM子ちゃんは言ったの。初め聞いたときは何のことを言っているのか分からなかったんだ。
『でも、帰らないと。M子ちゃんのおばちゃんが心配するよ』
って説得はしたんだけど、本人はテコでも動かず....。周りを見ても私たちの周りには誰もいないし、日も暗くなるしで焦ってたの。でも、なんとかM子ちゃんを説得して遊んでた公園を離れることになったの。公園からM子ちゃんの家までは近かったからいつも通り、私はM子ちゃM子ちゃんの家にむっかていたの。私はずっと下を向いてしょんぼりした姿のM子ちゃんに見かねて、
『M子ちゃん、今日はうちの家にくる?』
って言ったの。それを聞いたM子ちゃんは急に満面の笑顔で私を見て、
『ええ、いいの!!』
彼女の笑顔をしてこちらも嬉しくなって
『うん!いいよ!!』
って二つ返事したの。それからはウキウキで家に向かって行ったわ。
『ただいま』
って、玄関で二人で大声で叫んだら、お母さんが玄関にきて、驚いた様子で私に何があったのか聞いてきたの。私は今までのことを話すと
『わかったわ。ちょっとまってて』
って言ってどっかに電話をかけ出したの。私は、M子ちゃんの家にかけているんだなぁって思いながら、M子ちゃんと一緒に電話が終わるのをリビングで待っていたわ。しばらくして、お母さんがやってきて、
『今、M子ちゃんのお母さんに電話したら、今日はM子ちゃんのお父さんも夜遅くなるらしいから二人のお仕事が終わるまで一緒にいてもいいよ』
って、私とM子ちゃんはとても喜んだのを覚えているわ。
それからはM子ちゃんと二人で、夜ご飯を食べたり、勉強したり、テレビをみたりして楽しんだの。
夜9時すぎに、家のドアチャイムがなったの。M子ちゃんはその音を聞くと、両親がきたのがわかったのか、すぐに暗い顔になってしまったの。私が玄関を覗くとM子ちゃんの両親が私のお母さんと何かしゃべっているのが見えたの。私は、
『M子ちゃん。おばちゃんとおじちゃんがきたよ』
って、伝えたら、M子ちゃんは暗い顔をしながら、
『はるちゃん。もう会えないね。バイバイ』
私は驚きながら
『いやいや、また明日学校で会えるよ』
っていうとM子ちゃんは
『うん、そうだね」
って、力なくいうと玄関の両親のところまで走って言ったの。私は最後までM子ちゃんの顔を見ながら見送ったの。
でもね、次の日からM子ちゃんとは学校で会うことはなかったの。まるで、もう存在していないのかのように」
(沈黙が流れる。)
「えっ、部長。それで、話は終わりですか?」
(石川が沈黙を破った。浅見が応える。)
「まだよ。で、この話を昨日の夜思い出して、調べたのよ。そしたら、おかしいことがわかったのよ」
「おかしいことですか?」
(濱田が尋ねる。)
「M子ちゃんの家、その時、火事で燃えていたの」
「えっ、火事ですか?」
(と、この声は摩耶だ。)
「まやちゃん。その火事が起こったのはM子ちゃんに最後に逢ってた時。今まで、話してきた最中に起こっていたの。」
「それって....」
(この声は石川だ。)
「そう、私がM子ちゃんと私の家で一緒にいた時。彼女の家は燃えていたの」
「でも、M子ちゃんは部長の家にいたんですよね?」
(この声は、摩耶だ。)
「そのはずった。でも、当時の新聞紙を調べてみると、夜の8時くらいに消防署に通報があったらしいの。消防が駆けつけて消火活動を行ったらしいんだけど、1時間くらいは燃え続けていたの。その後、燃え後から、二人の大人と小学生低学年の位の焼死体が発見されたの。さらに、調べてみると出火原因は台所あったガスコンロからのガス漏れ、家族三人は全員、睡眠薬を飲んでいたことがわかっていて、警察によると一家心中であるって断定されたの」
「やっぱり、あの時、M子ちゃんと部長が一緒にいることなんて不可能じゃ...。じゃ、部長と一緒にいたM子ちゃんって....」
(この声は石川だ。)
「そう、私はいつからか存在しないM子ちゃんと一緒にいることになっていたのよ。今思ってみると、彼女の
『おうちが赤くて黒くなるから....』
は、もしかしたら、この一家心中の火事に起こった火の色のことを知っていたのかもしれないわ」
語り部: 浅見 遥香
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます