猫の日記念エッセイ;猫のルーツを辿る

 【猫の日記念】カクヨム文芸部公式自主企画「猫好きに刺さる小説・エッセイ」向けのエッセイとして、猫のルーツを辿り、我が家の家族の一員である猫、ノルウエージャンフォレストキャットが登場するまでを探ってみました。


 猫の祖先は約6500万年前に登場した肉食の哺乳類で、彼らの中から肉歯類に属するミアキス(Miacis) という生物が誕生したといわれています。ミアキスは約6500万年前〜4800万年前に森の中に生息し、体長約20〜30㎝ぐらいのほっそりとした胴体、長い尾で短い脚の動物でイタチやフォッサに似ていたと推定されています。新参のミアキスは森の樹上で狩りをしていましたが、森林の生存競争激化のため森を出て草原で暮らす種類や、大型化する種類に分化しました。ラテン語で「動物の母」を意味するミアキスですが、猫、犬、熊、狸などの祖先といわれています。森林から草原へと生活の場を移したミアキスは、その後犬に進化していく祖先となり、草原へ移動せず、森林に残って暮らしていたミアキスが後に猫の祖先へと進化していきました。森に残った猫の祖先は森に隠れて敵から身を守り、時には獲物を狩るために足の先端から出し入れできる爪はさらに鋭く発達しただけでなく、瞬発力や聴覚、木々を移動するための優れた平衡感覚や小さくてしなやかな体など、猫へと進化していく能力が身についていきました。


 約2500年前にはハイエナ科の近縁のジャコウネコのような姿をしたプロアイルルスに進化し、その後プセウダエルルスへと進化し、ここからヒョウ系(大型ネコ科)、ボルネオヤマネコ系、カラカル系、オセロット系、リンクス系、ピューマ系、ベンガルヤマネコ系、ネコ系に遺伝的に分かれていきました。今のイエネコを含むネコ系は約340万年前ころに祖先種から分岐したと考えられています。


 最新の研究により、現在世界中に存在しているイエネコ(人間と共生する猫)の祖先は、約13万1000年前(更新世末期=アレレード期)に、中東の小アジア(アナトリア)あたりに生息していたリビアヤマネコであると推測されています。このリビアヤマネコは、今から9500年~4000年前のどこかの段階で、人間と接点を持つようになったと考えられています。2004年8月、約9500年前のキプロス島のシルロカンボス遺跡(shillourokambos)から、人間と共に埋葬されたネコ科動物の遺骨が発見されました。


 また、古代エジプトでは農業改革の折り、鼠や蛇を駆逐する猫の習性に気づき、猫を手懐けるようになり、猫が家畜化されるようになりました。当時のエジプトの土着猫には、ジャングルキャット (Felis chaus) とリビアヤマネコ(Felis silvestris lybica)がいましたが、ジャングルキャットの方は野性味が強すぎて、なかなか人間にはなつかなかったようです。 一方リビアヤマネコの方は、当時の人々の忍耐力と、おそらくはリビアヤマネコ内部の気質的な突然変異によって性格が温和化され、家畜化が実現したといわれています。2013年にはエジプト先王朝時代の古代都市ヒエラコンポリスと呼ばれる区画の発掘調査で猫らしき骨が発掘され、遺骨を計測した結果、現在のイエネコの祖先種であるヤマネコ(Felis silvestris)のものに近く、エジプトにおける猫の家畜化を示す新たな手がかりとされています。当時の壁画にも猫が描かれたり、暗闇でも輝く猫の瞳が月に例えられたりしながら猫を神秘的な生き物とする風潮が生まれました。こうした経緯から猫が猫神バステト神として神格化され、ファラオの守護者、家の守護者といった役割を持つエジプト古来の神バステト神へ捧げられた猫神殿には数多くの猫像が建立されました。神殿の隣には猫を世話する猫舎のようなものがあり、世襲制の世話係が厳しい規則の中で猫たちを管理していたようです。猫がミイラ化され埋葬された墓地も発見されています。


 古代エジプトで大切に扱われた猫たちはマケドニア王朝であるプトレマイオス朝やその後のローマ帝国による世界各地への交易によりヨーロッパ地方やその交易地に拡散し、拡散した猫たちは古代ローマ神話のディアナ信仰と結びつき、北欧神話で愛と豊穣の女神フレイヤの戦車を牽く聖獣や雷神トールでさえ持ち上げることが出来なかった猫としてスコグカット(Skogkatt)と呼ばれるノルウエージャンフォレストキャットの祖先が登場します。また、中世にスカンジナビア半島に住んでいたバイキングには結婚式当日に花嫁に猫を贈る風習があり、戦いに出る時にも猫を連れていきましたが、その猫もまた、ノルウェージャンフォレストキャットの祖先だったと考えられています。故郷である北欧ノルウェーでは長年、スコグカットと呼ばれ、あらゆる家庭で鼠捕りを行う役目を荷っていましたが、ノルウェージャンフォレストキャットという名前がついたのは1930年代になってからで、正式に繁殖されるようになったといわれています。


※我が家にいる猫ノルウエージャンフォレストキャットの画像は以下から見れます。

https://kakuyomu.jp/users/endlessletter/news/16818023213993227775


※参考文献 猫の神話 池上正太著 他

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世界を巡るシーン 中澤京華 @endlessletter

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