第16話 みんなと合流し





「もうどこに行ってたのー! 心配したでしょー!!」


「……悪い」


「いつの間にかいなくなったから、みんな驚いたんだよ! 一体どこにいたの?」


「えっと……」



 ピンクの叫び声を頼りに、俺はみんなと合流することが出来た。

 姿を見つけて、すぐに飛びついてきたピンクは涙目だった。

 かなり心配させてしまったらしい。

 オオカミと遊んでいたから時間が経って、みんなを探し回らせた。

 申し訳なさ過ぎて、謝る以外に言葉が出なかった。



「それで、どうしていつの間にかいなくなったのか、教えてくれるよな? あんなにレッドが忠告したのに、どうして迷子になったんだ?」



 ブルーの顔が怖い。

 自分が悪いのは分かっていても、どこかに逃げ出したくなる。



「それが、俺にもよく分からなくて……」


「……は?」



 威圧的な雰囲気に、俺はレッドの後ろに隠れる。



「おーおー。どうしたクロ? 迷子になって怖かったのかー?」


「おい、レッド! ブラックをあんまり甘やかすんじゃない!」


「おいおい、そんなに怖い顔したらクロが怯えるって。大丈夫だぞ、クロ。こんな怖い顔しているけど、ブルーは凄い心配していたんだからな」


「それを言うな!」



 そうか。

 ブルーも心配してくれていたからこそ、こんなに怒ってくれているのか。

 レッドの背中から顔を見れば、勢いよくそらされた。



「えっと……」


「勘違いするなよ。お前がいなくなったら困るから探していただけで、深い理由なんてないんだからな!」


「あ、うん、悪い。本当に迷惑をかけた」


「ちゃんと素直な言葉にしないと、クーちゃんは分からないよー」


「うるさい」



 心配もしてくれたし、かなり迷惑をかけたから怒ってもいる。

 そう思って謝ったが、どうやら違ったらしい。

 人の心を読むことは出来ないから、読み取るのが本当に難しい。



「……それよりも、本当に何があったんですか?」



 本題にそれかけていたのだが、それを修正するかのようにグリーンが恐る恐る聞いてくる。

 何があったかと聞かれても、俺の方が教えてもらいたいぐらいなのだが。



「少しだけ不思議なんだ。ちょっと目を離したのは確かだけど、でもそんなのほんの数秒ぐらいだった。それなのに気づいた時には、みんなの姿がどこにもいなくなっていた」


「確かに、はぐれそうになったら誰かしらが気づきそうなものなのに、まるで突然姿を消したようにいなくなった気がするな」


「僕、クーちゃんのこと気にして走ってたんだけどー、気づいたらいなくなってたよー。もしかして神隠しとかそういうのじゃ……」


「まさか、そんな非科学的な」


「でも、その可能性は高くないですか?現にクロさんがいなくなる瞬間を、誰も見ていないんですから」


「……神隠しというのは、子供が巻き込まれるものじゃないのか?」


「特に子供限定とは決まっていないと思います。ただ昔は子供がいなくなることが多かったから、神隠しにあったんだと言われているだけで……実際は神様に気に入られれば老若男女関係ないかと」


「クーちゃんは可愛いから、絶対に気に入られたんだよー!」


「それは違うんじゃ……」


「なあクロ。いなくなっている間に、何があったんだ?」


「え?」


「なにか、まだ俺達に話していないことがあるだろ」



 レッドがいつもより真剣な顔をするから、俺は言うべきか迷っていたオオカミの存在を話すことにした。



「……夢でも見たんじゃないかな?」



 俺の話を聞いて、初めのブルーの言葉は現実を考えた冷静な感想だった。

 それは完全に否定出来ないから、夢なんだと言われればそう思ってしまう。



「クーちゃんには悪いけど、さすがにそんな大きなオオカミがいたら、今頃大騒ぎになっているはずだよね」


「そうだな。それにしてもかなりリアルな夢だった。まだ手触りだって覚えている」



 あんなにサラサラフワフワ、今まで一度も触ったことがない。

 夢だったとしても、もう一度触ってみたかった。

 手を開いたり握ったりして、あの感覚を思い出していれば、レッドが肩を組んでくる。



「そのオオカミは、クロのことを傷つけなかったんだろ! もしかしたら守り神だったりしてな!」


「あー。白い毛並みで、とても神々しかったからな。それもありえるかもしれない。とても綺麗で、それにとても優しかった」


「えー。もしかして好きになっちゃったりしたのー?」


「そんなわけ……いや、でも。すごく綺麗だったのは確かだ」


「駄目だよー! 好きになるのは! 絶対駄目!」



 あのオオカミのことを思い出して少し顔が熱くなれば、ピンクが騒ぎ出した。



「どうして、そんなに顔が赤いの! 恋!?  恋なの!?」


「いや、そういうわけじゃないけど……」



 そういえば鼻先だったけど、キスしちゃったんだよな。

 それに慰める目的だったとはいっても、頬を舐められたし、何回かは唇も舐められた。

 思い出せば出すほど、夢だとしても恥ずかしい。



「ねえ、何があったの!?  言えないこと!?  そうなの!?  僕、許さないよ!」



 顔がどんどん熱くなった俺を、何故か物凄く怒るピンク。

 レッドが組んでいる肩も痛くなってくる。

 ブルーやグリーンの視線も怖くて、俺は下を向きながらやり過ごすしか無かった。





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