第11話 強化合宿?





 宝を見つけられてはいないけど、確実に戦況は悪化していた。

 敵はどんどん強くなり、俺が見る限りだと将軍直轄の部下達が現れるようにもなった。

 イケメンジャーがピンチになる場面も増え、ロボットでの戦いも苦戦を強いられていた。


 このままでは良くない。

 誰もがそれを分かっていて、そして自分達の未熟さを痛感した。

 とにかく特訓するべきだ。

 お互いに何も言わずとも、さらに強くなるために行動しようと考えていた。






「強化合宿をしよう!」



 いつでも俺達のことを引っ張ってくれるのは、リーダーであるレッドだ。



「もうすでに場所は決めてあるんだ!」



 みんなが言い出そうと考えていたところに、率先して動いてくれていた。

 俺はもちろんのこと、他のメンバーもその行動の早さに驚いている。



「強化合宿って、どこに行く気だ。期間は?」



 驚きから戻ったブルーが、矢継ぎ早に質問する。

 レッドの言葉をまとめる役目をしているけど、いつも大変そうだ。

 フォローをする、というのも中々難しいことだろう。

 俺には到底出来そうもないことだから、素直に凄いと思う。



「場所は詳しくは言えないけど、山! 期間は予定では二泊三日! でも怪人が出た場合は中断して、そっちを優先する!」


「二泊三日かって……その間、俺達の学校や仕事の方はどうする? 予定を調整するのは大変だぞ? レッドは自由業みたいなものだから、まだいいが……それを決めている間に戦況は悪化して合宿どころじゃなくなる」



 現実的に考えれば、ブルーの言っていることの方が正しい。

 無計画に事を進めて、困るのは自分達だ。

 きちんと最初から順序立てて、準備をした方が絶対に良いだろう。

 でもそんなことを言っていたら、いつまで経っても強くなれない。

 レッドもブルーも、どちらも正しいからこそ、どうするべきなのか誰も答えを出せなかった。

 ピンクもグリーンも何も言えずに困り果てていて、俺に視線を向けてきた。


 そんな顔をされても、俺だって困ってしまう。

 でもこのままだと終わりの見えない会話になってしまいそうなので、嫌だ嫌だと思ったが何とかすることにした。



「……一度、試しに予定を確認してみるのはどうだ? そうすれば本当に無理なのかも、もしかしたら上手く調整出来るかも分かるだろう」


「それもそうだな!」


「……まあ、ブラックが言うことにも一理あるか」



 良かった。とりあえずは喧嘩の危機を乗り越えたみたいだ。

 レッドとブルーは意見が衝突することが少なくなくて、その度に険悪なムードが基地を包み込む。

 レッドがというよりは、ブルーがどちらかというと頑固なのだ。

 そういう時は自然と時間が経って冷静になるのを待つか、レッドから謝るか、司令官が説教をするまで終わらない。

 今は喧嘩なんてして仲間割れしている場合じゃないから、不穏なものは起こさないに限る。



「俺とクロはいつでも大丈夫だ!」



 レッドと俺に、予定という言葉が使われることはほとんど無い。だから俺達はそこに関しては、何の心配もなかった。



「えーっと僕はー、二泊三日だとすると……再来週なら空いてるよー」



 スマホでスケジュールを確認したピンクは明るい声で、再来週が空いていると言った。



「……あ、それなら僕も、再来週なら何とか調整出来そうです」



 そうすればグリーンもそれに続き、そしてみんなの視線がブルーに向いた。

 みんなに見つめられながら、無言でスマホを操作し始める。



「……それじゃあ、再来週だな」



 まさか、こんなにすんなりと決まるなんて。これはもう、やれと言われているようなものだ。



「よし、それじゃあ再来週、ここに二泊三日分の荷物を各自で用意して集合!」



 強化合宿とは分かっているけど、みんなで泊まりこんで一緒にいるなんて初めてのことである。

 顔にはほとんど出ていないが楽しみだから、テンションが上がった。








「……ふざけるなよ」



 あっという間に時は過ぎ、強化合宿をする日になった。

 前日の夜はそわそわして寝つけなく、少しだけ眠い。

 自己管理が出来ていないとバレないように、あくびを噛み殺しながら、俺は目の前の光景を見守る。


 早朝と言われる時間に基地に全員揃ったのだが、持ってきた荷物を見たブルーの顔が怒りに染まった。



「まず、ピンク。お前は、これからどこに行こうとしているんだ?」


「え? 合宿でしょ? 何言ってるの」


「それじゃあ、この大荷物はなんなんだ!」



 ピンクの周りには、スーツケースやパンパンに詰まったボストンバックが五個ほど並んでいた。



「えー。だって、使うものを詰めたらこうなっただけだよー」


「ぬいぐるみは必要ないだろ!」


「僕、これが無いと寂しくて寝られないのー。クーちゃんが抱き枕になってくれるのならいいけどー」



 ピンクと同じ背丈のクマのぬいぐるみに怒っていたところで、俺に話がとんできた。

 抱き枕、その言葉の意味を考えていた頷く。



「俺でいいのなら、代わりになるかどうか分からないが」


「え? いいのー? やったー!」


「ブラックは、こいつを甘やかしすぎだ」


「わ、悪い?」



 ピンクの荷物を減らすためもあり了承したのに、何故かブルーに怒られた。

 こういうのを理不尽だと言うのだろう。






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