第4話 ブルーはツンデレ……?
俺が仲間になるとレッドが決めて、もちろん反発があった。
敵のスパイだと疑われるのは当たり前で、俺はそれが違うという根拠を持っていなかった。
それでもレッドが大丈夫だと自信満々に言ったから、とりあえずは諦めるという形で受け入れてもらったわけだ。
「お前が裏切り者だと分かったら、すぐにでも切るからな」
まあ受け入れられたとはいっても、信用されたわけじゃなかった。
だからレッドのいない所でブルーにそう警告された時は、なるほどなと傷つくことなく納得した。
「全く、レッドは何を考えているんだ。こんな時限爆弾みたいな存在を仲間にしようだなんて」
メンバーの中でも、一番俺のことを警戒していたブルーの気持ちは分かる。
俺だって逆の立場だったら、簡単に受け入れられるわけが無い。
最初の方は戦闘にも出させてもらえなかったが、真面目にイケメンジャーの一員として行動していれば段々と仲間として認めてもらえるようになった。
それでもブルーだけは、俺のことを警戒したままだった。
今は心を少しは許してくれたと思うけど、それはそうなるにいたった出来事があったおかげである。
その日、現れた怪人は一言で表すとクズだった。
ターゲットをか弱い女性や子供に絞り、そこから闇のパワーを巧妙に溜めていた。
しかもクズのくせになかなか強く、イケメンジャーは苦戦を強いられた。
怪人の話を聞いていた時からありえないと思っていたが、モニターでその様子を見た時には自分が夢を見ているのではないかと錯覚した。
将軍の元にいて、あんな行動が許されるわけが無い。
地球を征服しようとはしているが、将軍は規律に厳しく、弱者を虐げるような真似をするタイプとは決して違う。
それなのに率先して汚いことばかりしている怪人に、違和感があった。
「……もしかしたら、この怪人は将軍とは関係が無いのでは……?」
『一体何を根拠に。もしかして庇おうとしているのか。そうなんだろ』
無線で俺を信じられないブルーの声が聞こえてくる。
第三勢力の情報は、怪人側も幹部の数人しか知らない眉唾ものだったので、ヒーロー側が入手していなかったとしても不思議は無い。
そんな内容を信じてくれと言ったところで、俺は信用されていないから無理な話か。
でも本当に将軍の手先じゃない場合、いつもの戦い方では限界がある。
あれは完全に将軍用の戦い方だからだ。
何とか信じてもらわなくてはと、俺は必死に他の情報を思い出そうとした。
第三勢力には、たしか特徴があったはずだ。
それを俺は、どこかで耳にしていた。
「……右手首の内側に、紋章が……」
『なんだって?』
「この世界で言う十字架? の模様が入っていれば、別の組織の奴だ。確認してみてくれ」
『なんで、そんなことを見なくちゃいけない』
「頼むから確認してくれるだけでいい! 俺のことは信じられなくても、少し見るだけで戦況は変わる可能性がある! お願いだ!」
『……確認するだけだからな』
思い出した情報を伝えれば、最初は切り捨てられたが、必死に頼み込むと確認だけは渋々すると言ってくれた。
少しの沈黙の後、ブルーの叫ぶ声。
『……あった!』
「そいつらには決定的な弱点がある。服で隠しているネックレスに、自分の魂の一部を入れているんだ。それを壊せば、一気に弱体化する!」
特徴と共に思い出した情報を伝えれば、モニターの中のブルーが自身の武器である刀で、敵を上から下まで一直線にネックレスを狙って切った。
『ぐあああああああ!? なぜっ!?』
良かった。
俺の持っていた情報は正しかったらしく、敵は胸を押さえてうめく。
知らず知らずのうちに握りしめていた手をほどき、俺は力を抜いた。
背もたれに深く寄りかかれば、自然と安堵の息がこぼれる。
戦いはまだ終わっていないが、彼等ならばもう大丈夫だろう。
その後、巨大化するハプニングがあり、俺は慌ててロボットに乗り込み助太刀に向かった。
ネックレスを破壊していたおかげか、巨大化しても敵は最初ほどの強さは無かった。
必殺技でなんとか倒し終え、基地へと戻る最中、誰かに肩を叩かれる。
そちらを見てみれば、しかめっ面をしていたブルーが立っていた。
「どうした?」
まだ文句を言いたいのかと内心でげんなりとしていると、口を忙しなく動かしたブルーが頭をめちゃめちゃにかき回す。
「大丈夫か?」
挙動不審な姿に心配してしまう。
もしかして戦闘中に、頭でも打ったのだろうか。
そっと手を伸ばせば、触れようとする瞬間、パッと体が離れていく。
「何しようとしているんだ!?」
「何って……人間はこういう時、熱を測るんだろう?」
温度を感じ取れるから、体温が高ければ分かるはずだ。
だから測ろうとしていたのだが、この行動は良くなかったらしい。
「悪かった。まだ距離感というのが掴めなくて」
「……そっか。そうだよな。お前はそういう奴だった」
今度は一人で納得するように吐き出したブルーに、変な人だという気持ちが膨らむ。
一体何のために俺を引き止めたのだろう。
話を待っていれば、ブルーがまた口を開こうとして、そして結局何も言わずに背を向けて立ち去っていく。
結局何だったのだろうと不思議に思っていれば、遠くの方で立ち止まったブルーが何かを呟いた。
普通だったら聞き取れないかもしれないが、俺は耳が良い方だから簡単に分かった。
「……助かった」
一言だけ呟くと、今度こそ立ち去っていく。
たぶん礼を言ってくれたのだろう。
でも声がとてつもなく小さすぎる。
こういうのは、地球の言葉でなんと言うのだったか。
そうだ、たしか……
「……ツンデレか」
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