第10話 オートカウンター
私の目の前にいる女の髪は赤い。それは頬の当たりまで伸びている。目は緑色で手に短剣を持っている。真剣な表情を浮かべているのは私がキメラ……いやモンスターだからだろう。
不意打ちをしてきた時は少し驚いたが、オートカウンターがある限り私は即死することはない。
さて、どうしたものかな。こんな森の中で派手に戦えば自然を破壊してしまう。
私としては早くこの場から去ってほしいのだが、向こうはそうではないらしい。
さっきからその女の腹が泣いている。
生まれたばかりの人の子の泣き声よりかは小さいが、女が腹を空かせていることはそれで分かった。
言葉が通じるかどうかは分からないが、とりあえず話してみよう。
「おい、女。私が何を言っているのか分かるか?」
「ふ、フレアキャットがしゃべった!」
あー、そうだった。今の私はフレアキャットだった。この姿だと警戒されてしまうな。
よし、では元の姿に戻るとしよう。
私が元の人の姿に……あまり好きではない幼女の姿に戻ると女は目を見開いた。
「すまない。驚かせてしまったな。で、どうだ? 私が何を言っているのか分かるか?」
「す、すごい……」
ん?
「君、すごいね! 私より年下なのに変身魔法が使えるんだね!」
「お前は何を言っているんだ? 私は……」
「でも、服は着た方がいいよ。あっ、そうだ。昔、私が使ってたローブがあるから、しばらくの間それを着るといいよ」
「いや、だから私は……」
「何してるの? 早くこっちに来なよ。いつまでも裸でいたら風邪ひいちゃうよ?」
この女、さてはバカだな?
まあ、無駄な戦闘をしなくて済むのならそれでいいか。
「分かった。分かったから大声を出すな。森のモンスター共がこちらを睨んでいるから」
「え? あー、ごめんね。気づかなくて」
「別にいい。気にするな」
「あー、うん、分かった」
ずいぶんおとなしい子だなー。どこから来たんだろう。でも、かわいいなー。頭撫でたい。
この女、さっきからずっとニヤニヤしているな。敵意はないようだが、一応警戒しておこう。いつ私がキメラだということがバレるか分からないからな。
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