第6話 クモ型モンスター

 あ、れ? 体が……動かない。

 カマキリ型モンスターを倒してから数時間ほど時が進んだ頃、私はようやく意識を取り戻した。

 私はキメラだが、魔力タンクは小さい。

 元の体が小さいからだ。

 どうして私はいつまで経っても幼女なんだ……。

 成長ってなんだ? 胸は本当に大きくなるのか? 背が高くなるとどうなるんだ? 年を取るとどうなるんだ?

 私はそんな感じで色々考えていた。

 なぜ? それは体が動かないからだ。

 他にやること、やれることが他にないからだ。

 私は一度深呼吸して自分を落ち着かせた。

 焦るな、とりあえず今自分がどこにいてどんな状態なのかを把握する必要がある。

 視界は真っ暗、体は動かない。

 思考できるし呼吸や眼球運動も普通にできる。

 だが、体が動かない。

 待て、指だけは少し動くな。

 私は指を少し動かしてみた。

 えっと、これはなんだ? ねばがあるな。シルクに近いような気もするが、どちらかというと……糸、かな?

 私はそこでようやく理解した。

 このままだと私はやつに食われてしまうということを。


「まいったな……」


 私はつい弱音を吐いてしまった。

 が、すぐに脱出するにはどうすればいいのかについて考え始めた。

 燃やせば大抵なんとかなる。

 しかし、こんな密閉しているところで火を使えば私もただでは済まない。

 何かこう刃物があればいいのだが……。

 あっ、あるじゃないか。

 私はキメラだ。だが、普通のキメラではない。

 自分の中にあるモンスターの力はもちろん、一度戦ったモンスターの力も使うことができるのだから。


「少し借りるよ」


 私はフレアキャットから一度人間に戻ると、自分の両腕を先ほど戦ったカマキリ型モンスターのかまにした。

 私はそれに風の力を付与して糸を切り裂いた。

 まゆのようなものから解放された私は瞬時に大きなコウモリ型モンスターに変身した。

 正確には目だけフレアキャットなのだが。

 さて、私が眠っている間に糸で動けなくしたやつはどこにいるのかな?

 あっ、いた。あれは……女郎じょろう蜘蛛ぐもだな。

 あの黄色と黒のしま模様は嫌でも忘れない。

 私はやつに攻撃される前にキングウシガエルに変身した。

 食われる前に食う。自然界ではこれで大抵なんとかなる。

 まあ、なんとかならない時もあるが。

 私は舌をビヨーンと伸ばしてやつを拘束すると、やつが抵抗する前に口の中に入れて咀嚼そしゃくした。

 おっ、なかなかやわらかいな。

 特にお腹のあたりがうまいな。うん、これはいけるな。

 はい、ごちそうさまでした。

 それにしてもクモの巣だらけだな。

 どうやって移動しよう……。

 あっ、そうだ。マッハハチドリになろう。

 魔力はまあまあ消費するけどクモの巣がないところまで飛んでしまえば、またフレアキャットの姿で移動できるようになるから。

 よし、そうしよう。

 私はマッハハチドリに変身すると、研究所の出口を目指して飛び始めた。

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