二人のメイド
「いってきまーす」
ランドセルを背負って家を出るメグ。
今日は俺は午前が休講になったで見送る立場だ。
普段は俺のほうが早く家を出るため、メグを見送るってのは少し新鮮だった。
「きをつけてなー」
赤いランドセルが見えなくなると、ふと一つの疑問がわいた。
小学校でのメグはどんな感じなんだろう。
犬耳としっぽを出したまま通える、人とは違う学校とは聞いたことはあるが。
「機会が有ったら見てみたいな」
やっぱり生徒も先生もケモミミなんだろうか?
◆◇◆◇◆◇
ランドセルを背負い、晴れた空の下歩くこと数十分。メグは自分の通う小学校についた。
「メグちゃん、オハヨー」
「あ、ウラちゃん! おはよー」
校門近くでばったり会った同級生にあいさつ。
白いウサミミが特徴のウラちゃんはメグの親友だ。
ウララギを略してウラちゃん。
メグより少し背が小さいが、耳を足すとメグより高くなる。
なお、ケモミミ小学校では耳の高さは身長にカウントされない。
なので、ウラちゃんは整列しても一番前なのだ。
ちなみにメグは前から二番目。二人に大差はない。
「ね、ね、メグちゃん今日の放課後遊ぼ?」
「いいよー! わたしもあそびたーい!」
「やった! ね、ね、私ねメグちゃんの家に行ってみたいんだけど……だめかな?」
いわれてメグは少し考えこむ。
実は修司と同居を始めてから友達を家に挙げたことはなかったのだ。
以前、修司やお母さんからは友達を呼んでも良いと許可をもらってはいた。しかし、なんやかんやで、外で遊ぶことのほうが多かったのだ。
「それに、メグちゃん家でメイドさんしているって言ってたでしょ?」
「うん、そうだよ?」
「メイドさんのメグちゃん見てみたい!」
「えー! なんでー⁉」
「見たことないもん! それに……」
「それに?」
「わたしも着てみたい……かも?」
「あー……」
ウラちゃんのメイド姿……見てみたいかも。
小さな誘惑とメグちゃんの勢いもあり、おうちで遊ぶことが決定したのだった。
◇◆◇◆◇◆
「ただいまー」
「おじゃましまーす」
メグとウラの二人は放課後学校からそのままやってきた。
家に帰るのは家族ではメグが一番初めなため、今は家に誰もいない。
「だれもいないのー?」
「うん、たぶんご主人はまだ大学かも」
「そっか。じゃあ遠慮なくおじゃましまーす」
二人はメグの私室に入りランドセルを放り投げる。
「ね、ね、早く見せてよ!」
「わかったよぉ」
目をキラキラさせたウラに急かされるようにメグはクローゼットを開ける。
メグが家でメイドをやっていることは、何度か話したことはある。メイド服は母親に作ってもらっており、それがすごく可愛いということも話した。何着か種類があることもメグは話していた。
メグはクローゼットの中からいつも着ているメイド服を何着か取り出す。
「えっと、これとこれと……」
「うわ、うわー。フリフリだぁ!」
メグが取り出したのは普段来ているメイド服。
黒を基調とし、白いエプロンが付いたロングスカートのメイド服。ピンク主体としたの全体的にパステルカラーのフリフリ多めなミニスカメイド服。そして、緑色の和風なメイド服。
どれもタイプが違うメイド服で、どれも可愛い。
「どれでもいいよ。ウラちゃん何が着たい?」
「うーん迷うけど……これ!」
ウラが選んだのはピンク色のミニスカメイド服だった。
「じゃあ私はこっちの黒にしようかな」
選ばれなかった和風メイド服はクローゼットにしまい、二人はさっそく着替え始めた。
「どう? ウラちゃん着れる?」
「ん、んー……だいじょう……ぶ?」
「着方わかんなかったら行ってねー。あ、そうだ!」
思い出したように箪笥を開け、中にあったものを取り出す。
「はい。その服用のニーハイ」
「ありがとー」
「あ、あと、頭に何つける? プリムとかリボンとかいろいろあるよ」
「え、いっぱいあるじゃん。どうしようっかなー!」
メイド服を着て、スカートとエプロンを整え、背中側のリボンで止める。ちなみにこの大きなリボンは飾りで、実際はボタンで留めている。
口ゴム部に飾りのついた白いニーハイをはいて、後は頭への飾りをつけるだけだ。
プリム、リボン、キャップなどある。ここはそれぞれのケモミミに合わせて選ぶ必要があるのだが、それでも迷ってしまう。
「じゃー、これ! 小さなリボンがついたカチューシャ!」
「ウラちゃんはこれ? じゃあわたしはこのおっきなリボンにしよーっと」
ウラが選んだのはピンクの小さなリボンが多数ついたカチューシャ。メグは大きなリボンの髪留めを選んだ。
それぞれのケモミミに邪魔にならないように、位置を調整すると……。
「でーきた!」
「できた!」
二人は鏡の前でくるりと一回転。スカートのすそがふわっと舞う。
イヌ耳クラシックメイドとうさ耳ミニスカメイドの完成だ。
もちろん、ケモミミ用の尻尾穴はちゃんとついている。彼女らのスカートからは、くるんと丸まったイヌしっぽと白いふわふわウサギしっぽがついている。
「わー、かわいいー! こんなの初めて着た!」
「ウラちゃん似合ってるー! ピンクが可愛い!」
「メグちゃんもすごく可愛いよ! シンプルなのにエプロンのフリルがすっごく良い!」
二人はその場でくるくる回りながら互いの可愛いを見つけ出す。エプロンのフリルが良い、カチューシャのリボンが良い。ワンピースの色が似合う。
メイド服など普段着ることができないから、ウラのテンションは上がりっぱなしだ。
メグとしても自分以外のメイド服姿を見るのは初めてなので、一緒に盛り上がってしまう。
「ね、ね、メグちゃんは普段どんな感じでメイドさんやってるの?」
「んーとね、お洗濯とかお掃除とか……」
「お料理とか?」
「料理はまだ覚えてないんだ」
「そっかぁ。メグちゃんの言っていた『ご主人さま』はまだ帰ってこないんだね」
「んー、多分もうそろそろ帰ってくると思うけど……あ、帰ってくる!」
耳を立ててみると、玄関の外で会談を上がってくる聞きなれた足音がする。
ご主人が帰ってきたのだ。
「ホント⁉ じゃあお出迎えしよ!」
「うん! あのね、「おかえりなさい、ご主人さま」って言うんだよ」
「わかった!」
「行こう!」
二人の小さなメイドはご主人のお出迎えをするために玄関へ急ぐのだった。
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