第9話 ちゃんとリードする

 キーンコーンカーンコーン。


 昼休みを迎えた。


「さてと……」


 僕はいつも通り、1人で弁当を食べようとした。


「ねえねえ、ジローちゃんっている?」


「はっ? 誰だそれ?」


「えっと……あっ、アレっぽくね?」


 何やら、僕のことを呼ぶ声がしたような……


「よっ」


 そばで声がしたので振り向くと、見知らぬギャルたちがいた。


「え、えっと……」


「あ、ウチらアリサの友達だよ~。ユウナでーす」


「ミカコでーす」


「トモエでーす」


 セミロング、ロング、ツインテのギャル子さんたちが言う。


「あ、ど、どうも」


「てか、ボケッとしてないで、こっち来なよ~」


 僕はギャル子さんたちに掴まれて、立ち上がる。


「え、ちょっと……」


「彼女がお待ちかねだよ?」


「亜里沙ちゃんが?」


「うん」


 僕はそのまま、笑顔のギャルたちに引っ張られて行く。


「おい、戸川のやつ、またビッチに絡まれているじゃん」


「しかも、今回は複数だし」


 周りの男子たちが言うけど、


「「「あ?」」」


 ギャル子さん達が睨むと、大人しくなった。


 や、やっぱり、ギャルが本気を出すと怖い。


 そのまま、廊下に出た。


「あっ……」


 そこに、亜里沙ちゃんがいた。


「ジ、ジロー……」


「亜里沙ちゃん……あれ? 体操着?」


「う、うん、ちょっと……ね」


 亜里沙ちゃんの表情に少し影が落ちた。


「ほれ、ジローちゃん。ちゃんとリードしな!」


 ベシッ!


「あいたっ」


「頼んだよ、アリサのこと」


 ニシシ、と笑顔で言われる。


「は、はい」


 頷いた僕は、亜里沙ちゃんを見た。


「……ジロー、行こ?」


「う、うん」


 いつになく弱々しい彼女を見て、僕はためらいつつも、手を握った。




      ◇




 屋上を穏やかな風が吹き抜けていく。


 僕たちはベンチに腰を下ろした。


「あの、亜里沙ちゃん……」


 何かあったのかと、聞こうとした。


「……ごめんね、ジロー」


「えっ?」


 亜里沙ちゃんが、搾り出すような声で言う。


「あたしまで……あいつに奪われちゃった」


「あ、あいつって……もしかして、梶野くん?」


「うん……」


 泣きそうな顔で頷く亜里沙ちゃん。


「何かされたの?」


「……あたし、禁欲のせいでカラダが限界で、メッチャ感じやすくなっていて……あいつとたまたま、廊下で肩がぶつかって、言い合いになって……乳首をつままれたの」


「ち、乳首を……?」


「それで、あたし……」


 亜里沙ちゃんは、ポロポロと涙をこぼす。


「悔しい、またあんな奴に……せっかく、ジローのために我慢して溜めていたのに……」


 彼女の涙が、ジャージのズボンを濡らす。


 僕はそっと、彼女の頭を撫でた。


「僕のことは気にしないで」


「……ジロー?」


「それよりも、亜里沙ちゃんが傷付く方が悲しいから」


 僕は語りかける。


 こちらに振り向いた亜里沙ちゃんは、


「うわーん! ジロぉ~!」


 顔をクシャクシャにして、僕に抱き付いた。


「わっ」


「あたし、悔しいよ~!」


「……よしよし」


 最初に出会った時は、僕の方が助けてもらったけど。


 今度は、僕が彼女を助けて、守ってあげたいと思った。


 だから……


「……んっ、ちゅっ、はっ」


 自然と、唇を重ねていた。


 最初は積極的な彼女に身を委ねるばかりだったけど……


 ――ちゃんとリードしてやりな。


 その言葉通り、僕の方から積極的に、亜里沙ちゃんの唇と舌をむさぼった。


「ジ、ジロー……あたひ、おかひくなっちゃう……」


 その言葉通り、亜里沙ちゃんの顔は汗と涙と唾液だえきでぐしゃぐしゃだった。


「ご、ごめん……つい、勢い余って……」


「ううん、良いの。ジローになら、メチャクチャにされても」


「亜里沙ちゃん……」


「……ねえ。ジローはまだ、ちゃんと禁欲継続中、だよね?」


「う、うん、まあ何とか」


「あのね、せっかくここまで我慢してくれたのに、申し訳ないんだけど……」


 亜里沙ちゃんは、モジモジとしながら言う。


「……嫌なこと、全部忘れたいから……今日の放課後、ジローのぶっといの、あたしに……ぶち込んで?」


「ぶ、ぶち込むって……ちゃんと、優しくするから」


「へへ、そうだね。そうしないと本当に壊れちゃうから。ジローのすっごく大きいし♡」


「は、恥ずかしいから、あまり言わないで」


「良いじゃん。あたしだって、おっぱいデカすぎて恥ずかしいし。あと少しで、3ケタ乗るよ~?」


「た、楽しみだね」


「その時は、ちゃんと報告するから……ねっ?」


「う、うん」


「あ、ごはん食べないと」


「そうだね」


「あーん、したげよっか?」


「えっ? いや、それは……」


「この期に及んで照れないの♡」


 やっぱり、亜里沙ちゃんは笑顔の方がよく似合う。







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