第7話 辛いこともあるけれど……

 僕は普段からそこまで、たくさん自慰行為じいこういをしている訳ではない。


 けど、いざ禁欲と言われると、むしろムラムラしてしまう。


 そして、自分のムスコが制服のズボン下でいきり立ってしまう。


 亜里沙ちゃんとエッチして、初めて自分のが他人ひとよりも大きいと自覚した。


 だから、ズボン下がより窮屈きゅうくつに感じてしまう。


「なあ、戸川とがわ


 クラスメイトの男子に声をかけられる。


「えっ、何かな?」


「お前さ、もしかして、須山すやまさんと仲が良いの?」


「へっ?」


「あの巨乳のギャル女」


「えっと……」


「いや、意外だなって思って。お前ら全然タイプが違うじゃん」


「ま、まあ……」


「付き合ってんの?」


「それは……」


「でも、やめておいた方が良いぞ」


「えっ、何で?」


 僕はパッと振り向いて聞き返す。


「だって、あいつビッチなんだろ? 見た目通りで」


「学校の男子、食いまくりだって」


「だ、誰がそんなことを……」


「えっ? 梶野が言ってたぞ」


 僕の脳裏に、彼の嫌らしいニヤけ面が浮かんでしまう。


「そ、そんなことはないよ。だって、亜里あり……須山すやまさんは……」


 ――初めての奥をジローに捧げられて、良かった。


「まあ、ビッチだとしても、あんなに可愛くて巨乳のギャル子なら、歓迎だよ」


「な~。今度、俺らにも紹介してくれよ」


「ていうか、お前ってあの片平かたひらさんとも幼馴染なんだろ?」


「マジで? けど、あの子はもうチャラ男の梶野に落とされてんじゃん」


「堕ちたもんだよな~。黒髪清楚で良かったのに」


「まあ、どちらにせよ可愛いけど」


 男子たちは僕の前で好き勝手なことを言う。


 正直、さすがの僕もちょっとだけイラっとした。


『違う、亜里沙ちゃんはビッチじゃない! 栞ちゃんだって、堕ちてなんかいない!』


 そう叫んでやりたかった。


「……ごめん、ちょっとトイレに」


 現実は、そう言って僕がこの場から退く他になかった。


 あまり騒いで角を立てると、より一層あの2人に迷惑をかけてしまうかもしれないし。


 まあ、所詮は弱っちい僕が逃げ腰なだけかもしれないけど。


「はぁ……」


 トイレに向かう廊下にて、僕はため息を漏らす。


「あ、ジロー」


 呼ばれて、顔を上げる。


「亜里沙ちゃん……」


「やっほー。ジローと会えて、うれちい」


 無邪気に微笑む彼女を見て、思わず口元が綻ぶ。


「ジロー、どうしたの?」


「あ、いや……何でもないよ」


 僕が言うと、亜里沙ちゃんはジーッと怪しむように見つめて来た。


「ジロー、何か嫌なことあったでしょ?」


「えっ? な、何で?」


「分かるよ。だって……ずっと、ジローのことを見ているから」


 亜里沙ちゃんは、照れた様子で言う。


「だから、さ。あたしに何でも話して?」


「えっと……」


 話したい気持ちは山々だ。


 けど、そのことを話せば、亜里沙ちゃんを傷付けてしまうかもしれない。


「また今度で……良いかな?」


「んっ、分かった」


 亜里沙ちゃんは小さく笑って頷く。


「そうだ、ジロー。ちゃんと、約束は守っている?」


「えっ?」


「オ◯禁だよ」


「あっ……も、もちろん」


「偉いね。あたしもね、毎朝ベッドの上でオ◯ニーするのが日課だったんだけど、我慢してるよ♡」


「へ、へぇ~……」


 ま、毎朝って……亜里沙ちゃん、やっぱり性欲が強いんだ。


「辛くない?」


「まあ、ちょっとね。でも、大丈夫。一週間後、ジローの立派なアレで貫いてもらえると思ったら……ねっ?」


「あ、あはは……で、でも、お互いに無理はしない方が良い……かもね」


「えっ、今すぐ抜いて欲しいの? じゃあ、一緒にトイレに……」


「ご、ごめん。僕ちょっと、漏れそうだから」


「あっ、ジロー!……っもう、照れ屋さんなんだから♡」


 僕は背後で嬉しそうにしている亜里沙ちゃんから逃げるようにして、トイレに駆け込んだ。


「ふぅ~」


 実際、少し漏れそうだったから、大分スッキリする。


「あれ、お前」


「えっ?」


 ふととなりを見ると、梶野くんがいた。


 同じく、用を足している。


「誰かと思えば、負け犬くんじゃん」


「あっ……」


 悔しいけど、僕は何も言い返せない。


 本能的に、彼の方が上だと思ってしまっている。


 僕はどこまでも、憶病だから。


「ていうか、お前さ……あん?」


 ふと、梶野くんが言葉を止めた。


 どうしたんだろうと思って見ると、彼の視線が僕のしもの方に向けられている。


「……マジかよ」


 そして、自分のそれと見比べている。


「あ、あの……」


「……ちぃ!」


 そして、舌打ちをした彼は、足早にトイレから出て行った。


 よく分からないけど、僕は少しホッとした。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る