第3話 幼馴染はお互いに、変わって行く

「じゃあ、ジロー。またね」


 玄関先で彼女に見送られて、帰宅して夕ごはんを食べてお風呂に入るまで、僕はずっと心ここにあらずというか、ボーっとしていた。


 僕が無断で学校をサボったので、親に連絡が行っていた。


 そこまで怒られることは無かったけど、もう心配させるような真似はやめておこう。


 シャワーを浴びながら、ふと自分のムスコというか、それを見た。


『ジロー、すっご……んああああああああああぁ!』


 今日、僕はまさかの童貞卒業を遂げた。


 栞ちゃんを失い、もうきっとずっと、一生童貞のままだと思っていたのに。


 まさか、あんな可愛い巨乳ギャルに……


 今でも、彼女のダイナミックな乳揺れの光景が、目に焼き付いて離れない。


 いやいや、そんな胸ばかり言っていたら、失礼だ。


 須山さんは明るくて、可愛くて、おまけに性格も優しかった。


 そんな彼女が僕を童貞卒業させてくれて、さらには彼女になりたいと言ってくれた。


 だから、とりあえず、(仮)の恋人関係になった。


「……何だか、怒涛どとうの展開過ぎて、目が回りそうだ」


 その晩、僕はあまり眠ることが出来なかった。




      ◇




 翌日、僕は普通に登校した。


 先生に怒られるかと思ったけど、僕が普段からマジメな生徒のおかげか、心配される程度で済んだ。


 そして、僕は廊下を歩いていると、


「おい、あれって……」


 少しざわついたので、そちらに目を向ける。


 僕はハッとした。


「あれ、片平さんだよな?」


「何か、雰囲気ちがくね?」


「え、どれどれ?」


 栞ちゃんは小さい頃から可愛くて、常に周りの注目を集めていた。


 それはこの高校に入ってからも同じこと。


 清楚で可憐な黒髪のセミロングがよく似合う正統派美少女だった。


 けど、そんな彼女が、髪型こそ変わっていないものの……染めていた。


 そして、首からネックレスを下げ、耳にはピアス……


 とにかく、飾り気のない清楚さが魅力だった彼女が、変わってしまった。


「おい、一緒にいるのって、梶野だろ?」


「あの、女泣かせのチャラ男な」


「ていうか、俺のダチの彼女が寝取られたらしいんだけど……」


「マジかよ、俺も気を付けねーと」


「ていうか、片平さんって、何か地味で冴えない感じのメガネくんと仲良くなかったっけ?」


「NTRされたんじゃね? 可哀想に。俺なら、あんな可愛い幼馴染がNTRされたら、死ぬぞ」


 ズシリ、と重しを乗せられるようだった。


 僕の体が、どんどんすくんで行く。


 この場から、消えたいような気持ちに――


「――ジロー、おはよう」


 呼ばれて、ハッと振り向く。


 今日も派手な金髪、褐色、巨乳のギャル子さんこと、須山さんがいた。


「お、おはよう……」


 僕が言うと、ニコッとしてくれる。


 それから、みんなが注目する2人の方に目を向けて、


「……相変わらず、悪趣味なやつ」


 吐き捨てるように言った。


「片平栞ちゃんも、あんな風に堕ちちゃって……」


「……うん」


 僕が重く頷くと、


「ごめん、無神経だったね。今の言葉」


「いや、平気だよ」


「ねえ、ジロー。こっち来て」


「えっ?」


 戸惑う僕は、須山さんに手を引かれて、賑やかな場所から離れて行く。


 やがて、ひっそり静かな所までやって来た。


「あの、須山さん……」


「そういえばさ、思ったんだけど」


「えっ?」


「戸『川』と須『山』って……あたしら、山と川コンビだね」


「は、はぁ……」


「ちなみに、あたしの『山』はどうかな~?」


 須山さんはニヤリとしつつ、自分の豊かな胸を指差す。


「い、いや、その……」


「昨日、エッチした時……バルンバルンって、揺れていたっしょ?」


「そ、そうだね……」


 言えない。


 その光景がずっと、目に焼き付いて離れないって。


「ジローって、おっぱいは嫌い?」


「そ、そんなことは……す、須山さんの胸は、素敵だと思う」


「ふふ、ありがとう。そんな風に言われたの、初めて」


 ちゅっ、と頬にキスをされる。


「ひゃわっ」


「かーわいいんだから、ジローは本当に」


 須山さんは言う。


「あたし、早く正式にジローの彼女になれるように、がんばるから。悪い所があったら、遠慮なく言ってね」


「そ、そんな、悪い所だなんて……むしろ、僕にはもったいないくらいだよ、須山さんは」


「ジローだって、本当は可愛い顔しているし、ここだって……誰よりも立派だよ」


 須山さんは、少し怪しく微笑みながら、僕の股間を指差す。


「あ、あはは……」


 僕は思わず前かがみになって、そこを隠す。


「けどまあ、あたしはあの粗◯ン野郎しか知らないから、絶対とは言えないけど……でも、ジローのは男優さん並みに大きいと思う」


「だ、男優?」


「ハッ……か、隠れてこっそり、エッチな動画を見ている訳じゃないんだからね?」


「ツ、ツンデレ……」


「やだ、何かあたし、おかしい」


 須山さんは両手で赤くそまった顔を押さえる。


 か、可愛いな……


「……はぁ、あたしがこんな乙女な顔を見せるのは、ジローだけだから」


「こ、光栄です?」


「ちょっと、何でギモン系なのよ? そのでっかいチ◯コ、もぐよ?」


「はうっ!」


 それからもう少しだけ、須山さんにイジられていた。







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