第1407話 復活の市長

「ヨシノブ!これはいったいどういうことよ!」

始めは惨劇を放心状態で見ていたアンナが復活したのか金切り声をあげて俺に声をかけてくる。


「どうもこうも、ここに性転換所が出来ました。

性自認で悩む人のオアシスになる予定です。」

「望まない人を今入れたのを見てたわ!」

「入れたのは俺じゃ無いけど、まああの人は女子オリンピックの金メダリストだろ?

女になる事に問題は無いだろ?」

「でも望んでいなかったわ!」

「それならなんで競技に出たんだ?それこそ問題だろ?」

何故か噛みついてくるアンナに俺はげんなりする。


「性はもっと自由であるべきよ!」

「それこそ問題だろ?

たしかに心が女性で身体が男性、もしくはその逆もいるかも知れない、だが時と場合によって使い分けるなんてあって良いはずがない。」

「世の中には性自認が定まっていない人もいるのよ!」

「それこそ身体に準じればいいだろ。」

「あなたは差別主義者よ!!」

「まあ俺は差別主義って言われても良いけど、一応聞いておこうか、撤回は出来ないけど大丈夫?」

「なんで私が撤回する必要があるの!

これだからアジア人は駄目なのよ!」

「なんだ、人を差別主義者と呼びながら自分はアジア人差別をするのか。」

「アジア人なんて黄色い猿じゃない!

ああ、穢らわしい!」

「まあ、良いけど、それなら俺達はこれからこの町との関わりを絶たせてもらうよ。」

「はぁ?なんで私が黄色い猿と関わらないといけないの!」

「みんな帰ろうか、ヘルマン、選手達に連絡、明日には選手村は閉鎖される。

俺達はこれ以上この町に関わる事は止める。

すみやかに撤退に移れ。」

「わかりました、すぐに手配します。」

ヘルマンは即座に行動を開始する。


「それでは失礼、まったくフランスという国のイメージがここまで変わるとは思わなかったよ。」 俺はセーヌ川にかけた浄化の加護も消す。

すると川は以前のような濁った状態へと変化する。


「えっ、何をしたのよ!」

「浄化するのを止めただけだ、元々の川の色を忘れたのか?」

「なんてことをしてくれたの!セーヌ川が汚されてしまったわ!」

「汚したのはお前達だろ?

見た目ばかりに囚われて見えない所を疎かにするお前らの結果だな。」

「元に戻しなさい!」

「断る、それじゃあ帰るか。」

俺は目配せをして全員を引き上げさせる。


「ちょっと!待ちなさい!待ってって言っているのよ!」

アンナは叫んでいたが俺は知らぬ顔をして帰国するのだった。

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