第1404話 惨劇
俺とリョウがやり合おうとしていた瞬間、テレビの向こうでは大惨事が起きる。
演説をしていた市長が突如起きた爆風に飛ばされひっくり返り、記者達もなぎ倒されていた。
「なんだ?テロか?」
「フランスは治安が悪いって聞くからな。」
俺達は争う手を止め、テレビの向こうの惨事を眺めていた。
「サリナさんを怖がらせおって、万死に値する。」
爆風の向こうに立っていたのは見知ったお爺さんだった・・・
「お孫さん、爺さんがボケて暴れているぞ、止めてこい。」
「息子のお前が止めろよ。」
「俺は息子じゃないからな。」
俺達が言い争いをしている所にイゾウが転移してくる。
「此処におったか、すぐに来い。」
「ちょ、イゾウさん!連れて行くならリョウだけで!」
「待った!ヨシノブなら殴られても大丈夫、ヨシノブだけにしよう!」
「二人共じゃ、アキラを止める贄となれ!」
「贄って言ったな!イゾウさん親友だろ、命をかけて止めてよ!」
「あれが友人の言葉で止まるか!
大人しく犠牲になれ!」
イゾウは二人の言葉を無視して転移して連れて行く。
「アキラさん!待ってください、私は驚いただけです。」
俺達が転移した所、サリナがアキラを止めていた。
「サリナ、何があったんだ?」
「ヨシノブさん、実はハルノブのトイレに寄った所、女子トイレに男性と思わしき人がおりまして、つい私が悲鳴をあげたところ・・・」
「・・・事態が理解出来た、その人は?」
サリナはクビを振る。
アキラがいる場所でサリナに悲鳴を上げさせればこの地上に形を残す事は難しいだろう。
「兎に角、混乱を落ち着かせよう。
アキラさんも落ち着いてください。」
「ワシは冷静じゃ。女子トイレを覗くような愚か者を消した所で問題はあるまい。」
「たしかにそうなんですけど・・・」
フランスはLGBTQが進み、性自認に従って女性を名乗る者を庇護していると聞いていたがまさか公共の場で男性が女性トイレにいるとは思わなかった。
「いったい何事です。」
ひっくり返っていたアンナが起き上がるとそこは大惨事となっていた。
「テ、テロです!テロが起きました!警官はすぐにテロ制圧をしなさい!!」
倒れていた警官達も立ち上がるなり周囲を確認するのだがテロリストらしき人影は無い。
「何をしているんです!早く動きなさい!」
アンナはヒステリックに騒ぐが誰がやったかもわからない状態である、警官達は動くことが出来ない。
「失礼、アンナ市長。
この騒ぎはアキラが起きたといえばわかりますか?」
「アキラ・・・東洋の天災ですか!」
「あっ、わかるんだ・・・」
「何故そのような物がフランスにいるのです!
あれは飛行機に乗れぬ身、移動は東洋に制限されていたはずでは?」
「・・・移動についてはどこにでも行けるようになったとだけ。」
「はぁ?どういう事ですか!」
「どうもこうも言葉の通りです、距離、世界に関係無く移動する手段を手に入れました。」
「そんな世界の終わりです・・・」
アンナの絶望的な表情からアキラの暴れようがパリまで届いている事に気付く。
「さてアキラさん落ち着いていますか?」
「ワシははなから落ち着いておる。」
「まずはサリナを助けてくれたことに感謝します。」
「感謝にはおよばん、サリナさんはハルくんの母であり、ワシの娘も同然じゃ。」
「そのうえで言います、守る為にとはいえトイレに男性がいただけで消すのはどうかと思います。」
「何を言っておる、ワシが消したのはトイレに女装してカメラを持ち込んでおった者じゃ。
如何わしいことこの上ない、その魂すら必要無かろう。」
「・・・」
非常に同意してしまう自分がいる。
「な、何を言っているのです、男性とはいえ性自認が女性の人もいるんです!
何故もっと寛大な気持ちで少数派を受け入れる事が出来ないのです!」
アキラが怖いのかアンナの視線は俺に向けられていた。
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