第1401話 平等な人権を求めて
「それで虚言癖の男は確保できたか?」
ドレイクは部下に確認を取る。
「はっ!現在移送中です。」
「いいか、これには国の命運がかかっている、どんな反対派が現れても奴の罪を変える訳にはいかない。」
イギリス国内及びヨーロッパ各国の中にはトム・バードの逮捕を聞きつけ擁護する勢力が存在していた、
「まったく、他国の歴史を改竄して何になる、確かに黒人奴隷貿易は我々欧州人の汚点ではあるがそれを他国に押し付けて良い理由は無いだろう。」
反対派の根幹にはアジア人差別がある、黒人の名誉を拡大するように見せてアジア人を貶めようとしているのだ。
人種差別を非難しながら新たな人種差別を生む姿には嫌悪しか無い。
「ドレイク首相はレイシストだ!黒人の名誉を回復させようとした者を不当に逮捕している!」
「トム・バードの解放を求める!」
一部の声の大きい者が街で抗議活動を行い、それをその思想に毒された議員が議会へと拾い上げてくる。
「ドレイク首相、国民の声に耳を傾けるべきだ!黒人の名誉を守る為に彼の釈放を要求する。」
平等人権委員会に所属するマイロがドレイク首相に抗議していた。
「黒人の名誉を守る事と嘘を流布する事は違う、歴史を主張するなら資料を提示するべきだ。」
「だが、多くの人が彼の論文を支持している、それは必要な事ではないのですか!」
「支持した所で歴史は変わらないし、変えてはいけない!」
「しかし、日本が資料を消失させたとある!消えた歴史をどうすればいい!」
「日本は資料を消失させるような国ではない、そもそも無いものを合ったといいそれを証明しろというのは暴論である。」
「話しにならない!そもそも罪状がおかしい!
何故反逆罪なんだ!それこそ不当に罪状を重くしているだけだ!」
「不当に重く?彼の主張は我が国の存続に大きな被害を出した、私は反逆罪を重いとは考えていない。」
「何を言っている!仮に嘘だとしても詐欺ぐらいではないのか!」
「この世界には神がいる、しかも我々は神の怒りを買っている状態なのだ。
その中で神の一人であるヨシノブの血に黒人の血があるなどという主張は国家の、いや世界の破滅に繋がる暴挙としか言いようが無い。」
「ドレイク首相、ヨシノブは神かも知れないがそれはアジアでの話だろう!」
「アジアの神だとしても神同士で繋がりがある、真実なら許されるだろうが神の血に難癖をつけるような真似をして世界が滅びないと何故言える。
マイロ議員、貴方はバードを擁護しているが貴方はその主張に命をかけて言っているのか?」
ドレイクは討論が平行線な事を感じるものの、マイロに確認を取る。
「馬鹿馬鹿しい、命をかけるなどという抽象的な事は止めていただきたい。
要は黒人の人権を守るか!守らないか!
ただそれだけなのです。」
「・・・マイロ議員、この議場はヨシノブの子達に依頼し神域を形成してもらった。
神が見ている前でもう一度言えるか?」
「なに?何を言っている?」
「今一度、聞く。ヨシノブの先祖に黒人が存在するというバードの主張を認めるか否か?」
「多くの日本人に黒人の血が入っている事に疑う余地は無い、ただヨシノブに入っているかどうかは別の話だ。」
マイロは多少危険を感じ、主張を少し弱める。
「マイロ議員、この場は既に断罪の場となっている、無意味な逃げは控えたほうがいい。」
「断罪の場?何を言っている議会は主張をぶつける場で・・・」
「・・・リミちゃん頼めるかい?」
「ええ、タラニス様お越しください。」
ドレイクの隣に控えていた少女が祈りを捧げるとその場にタラニスが降臨するのであった・・・
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