第1400話 無駄な抵抗
黒人侍の小説を書いたトム・バードは祖国イギリスから突如としてきた連絡に驚きを隠せなかった。
「イギリス政府が私の論文を取り下げろと、何故だ!これまで上手く言っていたはずなのに!!」
バードは確かに歴史を歪曲した、だが世界ではバードの書いた歴史が受け入れられ、様々なメディアで取り上げられるようになったのだ、この十年行ってきた活動が実を結び始めた今、イギリス政府に何を言われようとも取り消すつもりは無い。
「そうだ、言論の弾圧を受けている事を世界に公表すればいい、そうすれば私を擁護する者達が反応を見せてくれるはずだ。」
バードはSNSにイギリス政府から圧力をかけられている事を投稿する。
それは一部の界隈からのイギリス政府に対する批判が出るのだが・・・
「流石におかしくないか?」
「そもそも黒人侍って本当にいたのか?」
一部の界隈が騒げば騒ぐほど冷静に検証する者達が現れる、バードの主張することが荒唐無稽な事だと判明していく中、バードを擁護する者達は自らの肩書を使ってはいるものの根拠も無く、ただのお気持ち表明だけの援護をするばかりであり、反論に困れば相手をレイシスト呼びするか法的に訴えると言うだけであった。
「なるほど、法的に訴えればいいのか。」
バードを擁護していた日本の大学准教授は逆に准教授を訴える者が現れる。
「こんな事で訴えるなんて・・・」
「法廷ではっきりさせましょう、私は最高裁まで覚悟しています。」
名目はレイシスト呼びされた事の名誉毀損での裁判だが、実質は最高裁で擁護している者に真実を吐かせる為の行動であった。
「このレイシスト!こんな事で裁判をして何を考えているんだ、すぐに取り下げろ!
さもなくばこちらも考えがあるぞ!」
「取下げません、どちらが正しいか、法廷で、いや神の手によって決めてもらいましょう。」
訴えた者はクラウドファンディングによって資金を集め、バード擁護派を次々と訴えていく、彼らは自らの保身の為にSNSの削除を行い、裏で示談を申し込むのだが、訴えた者は退く事が無かった、示談で終わらす気は欠片も無く、真実を求めて最高裁まで突き進む事になる。
その有り様に日本国内のバード擁護派の声は段々と小さくなっていく。
「国際指名手配トム・バード逮捕!」
警察はイギリスの要請を受け、日本で准教授をしていたバードを逮捕する。
「は、離せ!逮捕されるいわれはない!」
「トム・バード、君には反逆罪で逮捕状が出ている。」
「反逆罪?ちょっと待てよ!反逆なんてした事も考えたことも無い!」
「言い訳は母国でするといい。」
バードが何を言っても警察は、聞く耳を持たなかった、淡々とイギリスに引き渡されるのであった・・・
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