第1395話 新選手村解放

俺はすぐにロマンに連絡を入れ、フランスの片田舎に土地の購入とパリ市内に一件の家を購入する事を伝える。

「ヨシノブ氏がフランスに居を構えてくれる事は素晴らしい事だと思うがなぜ、何も無い田舎の土地を買うのだ?」

「今回のオリンピック選手を助ける為に選手村を別に作ろうと思います。」

「なに?」

「流石に伝え聞く話だけでも可哀想に思えますので。」

「しかし、勝手な事をされてはオリンピック委員会の面目が潰れる上に田舎から移動など無理だろう。」

「その為のパリ市内に家を買うのです、転移門で繋いでしまえば一瞬で移動出来ますから、運行に支障が無いようにしましょう。」

「い、いやしかしだな、選手達を今更移動させるのはだな。」

「勿論希望者だけです、私としては別に0人でも構わないのです。

ただ選手にベストを尽くしてもらいたい、これだけです。」

「・・・わかった許可を出そう、だが今から作っても間に合わないだろ?」

「ご心配なく、間に合わせます。」

俺は大統領直々に許可を貰い話を進めていき、翌日には土地の確保に成功する。


「さて、家を創るか。」

俺は各国用にマンションを作り上げる、時間が無い為、全て同じ造りのマンションになる。

一階には大広間と会議室を何部屋か用意し、二階からは2LDKの個人用の部屋を用意する。

勿論エアコンは完備しており、必要な家具家電は備え付けだ、ただ各国の文化に配慮までは出来ていないのが残念な所ではあるがそれぐらいは我慢して貰うしかない。


そしてマンション群の中に何箇所か食堂を創る、大勢が入る事を想定しバイキング形式になるがそれは仕方無い事だろう。


俺は創り上げた選手村を先日知り合ったイギリスの記者を通して公開する事にする、

「ヨシノブ様、お話したのは昨日ですよね?

既に完成したのですか?」

「ええ、期間中に運用しないと意味がありませんから、是非報道して選手達に知らせてください。」

「こんなスクープありがとう!!」

記者は独占取材となっている事に感動していたのだが、俺としては報道してくれるだけでもありがたい。


記者は部屋の間取りから始まり食堂、転移門を紹介、他にも異世界の薬を完備してある医療施設、日本製品を販売している売店などが紹介され、オリンピック選手とそのスタッフなら無料で使用出来ることが伝えられる。


その報道が出た瞬間に各国から問い合わせが殺到する。

「ええ、各国用に宿舎を用意してますから泊まるなら本日からでも大丈夫ですよ。」

選手村に不満を持っていた者達が我先にと押しかけてくる。


「部屋にエアコンがある!!」

「暑い夏にエアコン無しは無理でしょ?

建物内は適温に管理してあります。」


「カーテンも付いてるわ!これで外から見られることも無いわ!」

「はい?外から見られたら着替えが出来ないのでは?」


「なあ、肉も食べていいんだよな!」

「ええ、食事にお肉料理もございますので、食べていただければ。」


「ねえ、バスルームが各部屋にあるって本当?」

「ありますよ、日本式ですので湯船があるタイプですけど、ちゃんとシャワーも使えます。」


「なあ、個人部屋っていうのは本当なのか?」

「ええ、仲間とはいえプライベートの時間は必要でしょう。」


俺は選手からの質問にどれだけ選手村が酷かったのか知ることになった。

「おとうさん、なんでおとうさんが選手の人と直接お話してるんです?」

俺が選手の質問に答えているとポメが俺の裾を引っ張り質問してくる。

「そりゃ俺が始めた事だし。」

「ヘルマンが言ってたのです、おとうさんはもっと胸を張るべきなのです。」


おとうさんというフレーズに聞き覚えのある選手は固まっていた。

「あ、あの、ヨシノブ様からですか?神様の?」

「ええ、ヨシノブですよ。」


「失礼しました!!御尊顔を知らず失礼な物言いをしました!」

「いえいえ、お気になさらず、見ての通り普通の人ですので、それより皆さんには全力でオリンピックに挑んでください。」

「あ、あの、日本に勝ってもいいんですか?」

「ええ、私は忖度無い全力を期待しております、日々の練習で積み上げた成果を世界中で楽しみにしている人達に見せてください。

私に気を使って日本に勝たせるような真似はやめてください。」

「わかりました!全力で大会に挑みたいと思います!」

「その意気ですよ、頑張ってください。」

俺は軽く手を振りその場を離れる。

ポメは俺と手を繋ぎ嬉しそうについてくるのであった・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る