第1374話 工事が開始されていたのだが・・・

「なに?ヨシノブが牧場を手に入れたか、やっと馬上槍を覚える気になったのじゃな。」

アキラに牧場経営の話が伝わったのだが、何処かで間違って伝わったようだった。


その言葉を運悪くその場で聞いていたリョウは気配を消しその場から逃走を・・・

「リョウ、牧場に向かうぞ。

お前もそろそろ人馬一体の奥義を覚える頃じゃ。」

「じいちゃん、現代人は人馬一体の奥義を覚えたりしない。」

「何を言っておる、武人たるもの馬を操るぐらいできねばならん。」

「操るぐらいはできるから、訓練は必要ないよ!」

「黙れ、ついてこい。」

「あっ、ハルくん!ハルくんもお馬さん見たいよな。」

リョウは周囲を見渡し助かる術を探す。


「リョウ♪オウマ?ウーマしゃん!ウーマしゃん♪」

わかったのかわかっていないのかハルノブは上機嫌で手を振り楽しそうにする。


「ふむ、ハルくんも馬に興味があるのか?」

「ウーマしゃん♪」

「よし、ならば一緒に行こうかのぅ。」

アキラの表情ご緩んだ事によりリョウは助かった事を感じるのであった。


イゾウを使い一行が辿り着いたのは工事が進む牧場なのだが、重機ではなく、人海戦術で工事が進められていた。


「なんでこんなに人を雇って・・・

って!第一騎士団!!」

リョウが呆れたように眺めていたのだが、作業員の中に見覚えのある奴らが多数いたことにより、作業をする者達がマインズ王国第一騎士団だということに気付く。


「はい、そっちは森林馬道になりますので木を植えますよ、アーサーさん持てますか?」

「無論問題ありません!二本は余裕です!」

カルラが図面を片手に指示を出し、それを笑顔で受ける騎士達の姿が其処にはあった。


「カルラちゃん!なにしてるの!」

「えっ?おとうさんが牧場を作るって言ってましたから作業をしてるだけです。」

「違うそこじゃない、なんでマインズ騎士団が来てるの?」

「リョウ殿、間違いがある!」

近くにいたアーサーがリョウに訂正を求める。


「アーサーさん、何が間違いなのかな?」

「今の私はカルラ建設の社員だ!」

「頭を冷やせ!」

「ちゃんと休暇は取ってきている!

・・・退職願いが受理されなかったのは残念だが。」

「アーサーさん!落ち着け!

まったくヨシノブ(元凶)は何処にいるんだ!」

「おとうさんならあちらで必要な物を相談しています。」

「ちょっと行ってくる!」

リョウはヨシノブに文句を言う為に駆け寄る。


「あれ?リョウ来たのか?」

「来たのかじゃない、なんでマインズ騎士団が来てるんだよ!」

「・・・俺が呼んだと思うか?」

「違うのか?」

「違う、当初は馬を他の牧場に預けて、重機を使って建設予定だったんだ、地元の建設会社にもお金を落としたかったしな。」

「まあ、そうだな、お前ならそうするのが普通か・・・」

「その中でカルラが手伝いに来てくれたんだ。」

「まあ、カルラちゃんならお前の手間を考えて手伝いに来るだろう。」

「そしたら付いてきた。」

「オマケみたいに言ってやるなよ。」

「一応ルーズさんには謝りに行ったよ。」

「それで?」

「今は国も平和だから、俺の所で休暇をさせてくれないかと頼まれた。

どうも心を病んでるみたいなんだ。」

「たしかに病んでるな、たぶん重症だ。」

「そういう事で自由にしてもらっている、みる限り、無理をしているようには見えないし。」

「笑顔ではあるな・・・」

騎士団は怖いぐらいに笑顔で働いている。


「はーい、こっちは坂路を作りますのでガウェインさん土を盛ってください。

あっ、ウッドチップを作る・・・ランスロットさんも頑張ってくださいね。

あっ、皆さんちょっと作業しててください、皆さんのお茶を用意してきまーす。」

カルラが手を振り離れていく。

すると離れ達瞬間、騎士達の動きが更に早くなる。


「おら!さっさと終わらせるぞ!最初にお茶をいただくのはガウェイン隊だ!」

「黙れ!このランスロットの剣を持ってすればウッドチップを作るぐらい雑作もないこと!」

「くっ、お前達さっさと穴を掘れ、我等が遅れることはまかりならん!」

各隊長達が檄を飛ばし作業速度が人外の物と化す。


「おいヨシノブ、休暇というのはなんだ?」

「さぁ?他所の国の事はわからないねぇ〜」

俺はリョウの追求から視線を逸らすのであった。

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