第1369話 意識は逸らされるもの

ヘルマンの仕掛けにより様々なところで不和が生じる中、俺達は北海道に来ていた。


「ミツヒラどうしたんだ?

急に北海道に行きたいって?」

「た、たまには男友達で旅行もいいだろ?」

「そりゃいいけど、ヘルマンに色々任せているからな、俺も手伝わないと駄目だと思うんだ。」

「ヘルマンくんは大丈夫だって言ってたぞ。

是非お前を旅行に連れて行くように言われたんだ。」

「親孝行のいい子だからな、無理をして無いか心配なんだよ。」


「心配すべきは他かも・・・」


「どうしたミツヒラ?なんか言ったか?」

「いや、良い子だよなって言っただけだ。」


ミツヒラがヨシノブを連れて旅行に来ているのには理由があった。

ヨシノブを悪く言った組織に攻撃を仕掛ける為にヨシノブの興味を別の所に向けるため、ヘルマンはミツヒラに声をかけていた・・・


「ミツヒラさん、貴方をおとうさんの友人と思い頼みがあります。」

「ヘルマンくん、我が社の取引と聞いたのでこちらに来たのですが?」

「ええ取引は行います、ただミツヒラさんには少し頼みを聞いてもらう必要があるというだけです。」

「頼み?出来る事なら協力しますけど・・・」

「それは良かった、ミツヒラさんにはおとうさんを連れて旅行に行ってもらいたいのです。」

「旅行か?それならヘルマンくん達も一緒に行ったら?」

「我々は大事な使命があるのです、ミツヒラさんにはおとうさんが楽しくて他の事が気にならないようにしてもらいたいと思っております。

その為にこちらを。」

ヘルマンは旅行費用として百万円を渡す。


「これは?」

「旅行費用です、勿論おとうさんの分は別に出しますから、それはミツヒラさんの分です。

領収書も何も必要ありませんから余ったらご家族で食事にでも行かれたらどうですか?」

「いや、貰いすぎだろ。」

「これぐらいの予算は問題ありません。

必要なら経費の上乗せを行えますのでご連絡ください。

大事な事はおとうさんの興味を引くことです。

おとうさんは興味を持った物に集中するところがありますので、友人のミツヒラさんならおとうさんの興味を引くことができますよね?」

「まあたぶん?」

「ところで話は変わりますが・・・

ミツヒラさん、これを奥様にお渡しください。」

ヘルマンはスッと封筒を差し出す、其処にはミツヒラの妻が先日行ってみたいと軽く言っていた千葉のテーマパークのチケットと東京行きの航空券があった。


「これは・・・」

「ミツヒラさんが遊びに行っている間、ご家族にも楽しい時間を過ごして貰おうと私達からの贈り物です。」

「・・・わかりました、引き受けます。」

「それは良かった。

是非皆さんで楽しい時を過ごしましょう。」

ヘルマンとミツヒラは握手を交わすのだった。

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