第1364話 立候補者達に
「皆さん、討論会お疲れ様です。
皆さんの高い志を聞き素晴らしいと感じております。」
「ヨシノブさんは何故この討論会にお越しくださったのですか?
ご意見があるなら質問してくれても良かったんですよ。」
討論会に参加していた地方の元市長出身の丸岩が話しかけてくる。
「私は都民では無いですし、今日は皆さんが意見を言い合う場ですので私は見学させて頂きました。」
「そうでしたか、それでは何故最後に出てこられたのですか?」
「はい、一つだけ皆さんに聞きたい事がありまして、よろしいですか?」
「ええ、私は答えれる事ならお答えしますよ。」
丸岩は周囲に目配せするのだが大体の立候補者が承諾の答えを口にする。
「皆さんがあげられた公約ですが、本当に実現する気はありますか?」
「なっ!それは流石に失礼では無いですか!公約とは実現すべき目標であり、少なくとも実現の努力をするということです、此処にいる立候補者全員がそのつもりのはずです。」
「それなら問題無いのですが、当選後公約だった事をサラリと消してしまう人もいますから。
あと丸岩さんは本当に実現出来る公約をあげていますか?」
「他の人は兎も角、私はちゃんと都民に対して約束できる事を公約にしています。」
「他の人は?」
俺が周囲を見ると少し不味いと思っている者は長々と言い訳じみた答弁をしていた。
「なるほど、では私から日本の神として一つ働きかけましょう。」
「えっ?」
「貴方がた立候補者に祝福を!
都知事になり今掲げている公約を実現出来れば貴方達の寿命が十年延びます。
ですが、公約を破れば寿命が二十年無くなります。」
「なっ!達成出来ない事もあるだろ!そんな横暴な事が許されていいのか!」
「出来ない目標を掲げるのは騙しているも同然ですよ。
せめて実現できるかどうかは調べて口にするべきでしょう。
まあ、実現の努力を最大限にしたのなら寿命が縮む事はありませんよ。」
「そんな事は誰がわかる!」
「それは貴方自身がわかっているでしょう?
私の祝福は貴方の考え、心に連結しています。
出来ていない、努力していないと感じれば寿命が縮むだけです。
それと横暴が許されるかどうかとおっしゃいましたが、私の行為が横暴だと言われても構いませんよ。
神とは元々横暴な者ですから。
ただ大勢の人達が汗水流して納めた税金を使う者が適当な約束を掲げて、好き放題していい訳が無いでしょう。
天罰の一つを用意するのも神としての職務と考えます。
まあ、都知事にならなければ発動しませんから、御安心を。」
立候補者の多くは青い表情を浮かべている、その中でも最有力候補と呼ばれている大池達が絶望的な表情を浮かべていることに政治の闇を感じるのであった。
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