第1363話 突撃取材?

「イ、イチゴさん、どうしました、と言うか何をしているんです?」

「勿論、撮影です。

今回の都知事選について町の人に聞いていたんです。

そうだ、ヨシノブさんはどんなご意見をお持ちですか?」

カメラを回しながら無邪気に質問してくる。


「俺の意見?」

俺は撮影されるつもりも無かったのだが、撮影されながら質問された以上、何らかの答えを出したいと思う。


「はい、皆さん聞いてみたいと思うんですよね。」

「とは言っても都民じゃないからね。」

「何を言ってるんですか、日本の神様なんですよ、ご意見の一つぐらいくれてもいいじゃないですか?」

「そうだね・・・

それじゃ公約をちゃんと守って、集めた税金を健全に使ってくれる人かな?

あと都民の皆さんにも政治に目を向けてちゃんと投票してほしいかな。

まともな人を選びないと税金を好きなように使われるだけだからね。」

「そうなんですね、でも公約を守るのは普通のはずですよね?」

「その普通が出来てないからね・・・

そうだ、神テレビで都知事選の討論会出来ないかな?」

「討論会ですか?予定はありますよ。」

「それはいい、俺も傍聴出来るかな?」

「いつでもどうぞ、ヨシノブさんの出入りを断るスタッフなんていませんよ。」

「それならお邪魔させてもらおうかな。」

「是非、皆さんには私からも伝えておきます。」

イチゴはニコニコと笑顔を向けながら取材を終えるのだった。


「おとうさん、何を考えているんですか?」

「なに、知事になろうとしている人の意見を聞きたいと思ってね。

きっと都民の事を考える立派な人が出馬しているんだと思ってるよ。」

「日本の政治家には少ないタイプですね。」

「いや、きっと公約を守りたくなるはずだよ。」

俺は当日を楽しみにするのだった。


そして、討論会の日、各候補が自分の公約について、じっくりと話していた。

ほとんどが耳障りの良い事を並べており、その実現に向けてのプランを話したりしない。


それぞれが自信満々な笑顔を向けて、画面の先にいる有権者に語りかける、その姿に惹かれる者もきっといるのだろう。


「さて討論会を締めくくるにふさわしい人に挨拶してもらいます。

ヨシノブさんどうぞ〜」

司会をしているイチゴは何でもないことのように言うが神の来訪である、慣れているスタッフは兎も角、立候補者はそれぞれ息を飲むのだった。

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