第1361話 暇神は・・・

「なぁリョウ、俺は思うんだけどな、絶対に嘘をついてはいけない、認められてはいけない場所があると思うんだ。」

「まあ、確かにそういう場所はあると思う。」

「裁判所と言うものは嘘が蔓延ると冤罪を引き起こしてしまうじゃないか。」

「まあな。」

「だからこそ、真実を話す必要が有るんだ。」

「わからないでも無いがいきなりやるな、みんなが混乱するだろ!」

「暇な時間があったからね〜」


俺はノラリクラリとリョウをいなしていたのだが・・・


「おとうさん、どこかに忍び込むなら僕達を連れて行ってください!」

子供達からも抗議が入る。

「いや、危ない事は無いし・・・」

「いつ襲撃がある、わからないじゃないですか!そんなに僕たちは頼りになりませんか・・・」

オットー、パウルの涙ながらの抗議には俺になすすべは無かった。


「ごめんよ、ちょっとした暇潰しのつもりだったんだ。」

「ぐすん。もうしないって言ってください。」

「もうしないから大丈夫。」

「それじゃ、オウチで子作りに励むと約束してください。」

「わかった、わかっ・・・子作り?」

「グスン・・・」

「わかった、わかったから二人して泣くなよ。」

泣く子には勝てない、俺はなだめる為に了承するのだが・・・


「じゃあ、こちらに。」

ヘルマンがいきなり現れ俺を連れて行こうとする。

「ヘルマン?どうした何かあったのか?」

「はい、調べによると今日はクラルさんの妊娠する可能性が高い日です。

頑張ってください。」

「ちょ、まだ日が高いよ!明るいうちからすることじゃないよ。」

「そうですか?それならアマテラス姉様に頼んでお日様には隠れてもらうこともできますが?」

「それはやっちゃ駄目だから!」

「なら諦めてください、アマテラス姉様も次の子供を待っているのです。

さあこちらに。」

ヘルマンがグイグイ引っ張るので俺はそのまま引き連れられていく・・・


「リョウ助けてくれ!」

「十月十日後に助けてやるよ。」

「今助けろよ!」

「あとで栄養ドリンクを差し入れてやる。」

薄情な友はニタニタ笑いながら手を振り俺を送り出す。

その行動には俺を助ける要素など一つも無かった・・・


「ヨシノブさん、よ、よろしくお願いします。」

「クラルさん、まだお昼だしあとにしようか。」

「大丈夫です、すぐに夜になりますから。

それにお部屋は暗くしてますから。」

「いやいや、他にもやるべき事が・・・」

「ヘルマンくんが片付けてくれていますから大丈夫ですよ。

それに暇だから裁判所に忍び込んだんですよね?

子供達から危ない時間を無くしてくださいって頼まれましたよ。」

「え、え〜とそんな事もあったような〜」

「思い出すまで楽しみましょう。」

クラルの瞳はずっと妖艶な輝きを見せている・・


「戦略的撤退!」

俺は逃走ははかるのだが・・・

「開かない!」

扉は固く閉ざされ開くことはなかった。

「ふふ、魔王からは逃げられないのですよ〜

さあ、ヨシノブさんも楽しみましょう。」

「お、お手柔らかに・・・」


その日、ヨシノブの姿を見た者はいなかった。

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