第1354話 抽選会

先に抽選会場にいたカルラはロンメルの勝報は聞きつける。

「まずいわね、二柱も倒したとなるとロンメル隊がほとんど持っていきそうだわ。」

抽選会が始まる前に会場はざわついていた、集まっている子供達それぞれ日頃の仕事を確実に終えてここに来ているのだが、神を二柱倒したというのは大きな戦果である、それが個人ではなく部隊として得たのなら数少ない褒美の全てを取られかねない。

カルラ以外の子達は自分の仕事を確認して、レポートを書きなおす者もいた。


だがカルラの行動は違っていた・・・

「おとうさん、何かお手伝いする事はありませんか?」

エプロンをつけて調理場へと向かう。

「うん?カルラどうしたの?」

「少し早くお仕事が終わりましたので折角だからおとうさんと一緒に料理がしたいなと思って・・・

だめですか?」

「かまわないよ、カルラが手伝ってくれたらもっと沢山作れそうだな。」

「頑張ります♪」

カルラはヨシノブの手伝いをする事により、味見という形でご褒美にありつくのだった。


一方、カルラが不在の中、抽選会は行われていた。

「集まった諸君、日頃の任務ご苦労。

本日聞き及んでいるようにおとうさんが食事を用意してくれている。

ただ、おとうさんが作る料理には限りがある。そこで今週の功績によりその栄誉にありつけるようにする。

・・・だが、今回は功績の高い者達がいる、彼等に決まりだろう。

ロンメル隊、前に出ろ。」

「おう!」

ロンメルが代表して前に出る。

「お前達の人数を考え、今回の栄誉はお前達の総取りとなる。」

「ありがたい。

みんなやったぞ!」

喜ぶロンメル隊と悔しそうに拍手をするその他の子供達の姿があった。


「おとうさんの食事にありつけない悔しさはわかる、みんなも次回に備え日々の精進を忘れぬように。」

「「はーい。」」 

「なお食事会には当然ながらおとうさんも一緒に取られる、時間のある者は一緒に取るように。

以上だ。」


ヘルマンの締めの言葉とともに抽選会は終わる。


「さて、あとは我々内での取り分けだな。」

ロンメル隊は現在100名からなる部隊である、普通に切り分けなければ数が足りない事は明白だった。

「隊長!おとうさんが用意してくれた物を細かく切り分けるのはどうなのでしょう。」

「・・・たしかに、折角用意してくれた物を切り刻むのは違うな。」

「ならばこそ、恨みっこ無しのクジで優先順位を決めるのはどうでしょう?」

「優先順位を決めるのか?」

「はい、おとうさんの料理にはカレーといった量がやや不明な物もあります、クジの順番で好きな物を一つずつ取るのです。」

「みんなはそれでいいか?」

「「「はい!」」」

ロンメルは全員の総意である事を確認する。


「わかった、ただしそれだと半分ぐらいしか行き渡らない、クジで外れた者は文句を言わないように。

わかったな。」

「「「はい!!」」」


そして、クジが開始される。

隊長であるロンメルが責任をもってクジを作成するのだが、当然ながら隊長のロンメルが最初に引く事になる。

隊員達もロンメルが好きな物にありつくのは当然と考え誰も文句は言わないのだが・・・


「私は外れだ。」

最初に引いたロンメルがまさかの外れであった。


「隊長!!なぜ!!」

「ほらお前達も早く引け、いいな外れても文句を言わない事。」

隊員全員がロンメルがわざと外れたのだと感じる。

ロンメルが当たる事は全員が納得済みなのだが、ロンメル自身イカサマをしてまで当たる事を良しとしなかった、むしろ外れる者の心を感じ自ら外れる事で不平不満を感じさせないようにとの配慮だった。


ロンメルの心を知った者達はイカサマの無い、いやロンメル自身がワザと外れたクジを一人ずつ引いていく。

そこには誰も不満は存在しなかった。


「にゃ、ロンメル将軍、はんぶんこにゃ。」

ハンバーグが当たったウカノはロンメルの隣に座り半分をロンメルに差出す。

「ウカノ少尉、君が当たったのだから自分で食べなさい。」

「ウカノがあたったにゃ、だからはんぶんこするのもウカノの自由にゃ。」

それを聞いたロンメル隊員達は全員が当たった物を半分に分けあう姿が見受けられた。


「みんな・・・

わかったウカノ少尉、いただこう。」

「にゃ、あーん、するにゃ。」

ウカノのハンバーグを切り分けロンメルの口に運ぶ。

「ウカノ少尉、自分で食べれる。」

「あーんにゃ。」

「・・・あーん。」

ロンメルはウカノが差出すハンバーグを食べる。

それはこれまで食べたどのハンバーグより美味しい物であった・・・

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