第1338話 宴を離れると
「まったくお前達ときたら変わりすぎだ!」
酒も入りミツヒラも慣れてきたのか最初の固まった感じは無くなってきていた。
「そうか?俺は俺のつもりなんだけどな?」
「そうだ、神になったヨシノブはともかく俺は変わらないサラリーマンだぞ。」
リョウの言葉にヨシノブとミツヒラから不信の目が向けられる。
「お前のどこがサラリーマンだ。」
「お前働いているのか?」
「てめぇら、俺のどこが無職だ〜」
「全部。」
「ヒモだろ。」
俺とミツヒラはリョウに辛辣な言葉をぶつけるのだが、それもまた友人同士の掛け合いとなると楽しいひと時である、俺達は杯を重ねながらいつも通りの雰囲気を楽しんでいた。
「ちょっと、トイレに言ってくる。」
「その辺で漏らすなよ〜」
「誰が漏らすか。」
ミツヒラは席を離れトイレへと向かう・・・
「あれ〜ミツヒラさんじゃないですか?
こんなところでお会いするなんて思いもしませんでした。」
ようを終えた後、トイレの前でミツヒラは営業先のキム・クレに出会う。
「これはクレさん、お久しぶりです。」
ミツヒラは頭を下げ挨拶をする。
「ミツヒラさんは何故こんな高級店にいられる・・・いるのでしょう?
貴方の会社でこのような高級店で接待など不可能でしょう。」
「今日は仕事じゃないんです、友人との飲み会でこちらに来てまして・・・」
「はぁ?貴方のような小さな会社勤めが友人との飲み会でこの店を使うのですか?
貴方はもう少し身の程を知るべきです、ここは上流階級に属する者のみが立ち入りを許される店です。
まったくこれだから賢く無い者は駄目なのです。」
「そうでしたか、たしかに私の身の丈には合ってない店というのは実感してます。
ですが友人達はこの店に来るのに相応しい人物だと私は思ってます。」
「はぁ?どこまでも図々しい人ですな、貴方のような底辺の人間を相手にするのは底辺の人間と決まっているのです!」
「・・・まあまあ、クレさんはお仕事なのでしょうか?」
「もちろん、私のような一流営業マンは接待するのも一流と決まっているのだよ。」
「そうでしたか、それではご迷惑になるといけませんので失礼させてもらいます。」
「まちたまえ、君に特別に仕事をくれてやろう。」
「はあ?」
「今日接待している相手は訛りが強くて言葉が聞き取りにくい、同じ日本人なら聞き取れるだろう、私の通訳をするのだ。」
「お断りします、今日はプライベートで来てますので、友人が待っているんです。」
「そんな底辺の者は置いておきたまえ、それとも君の行動一つで君への会社への取引が無くなってもいいのか?」
「これは仕事とは別の話でしょう。」
「同じことだ、私が困っているというのに手を貸すこともしない相手とは今後の取引にも影響が出てしまうのは仕方が無い事だろう。」
「・・・わかりました、少しだけなら通訳をしますが友人がいますのですぐに帰りますよ。」
「話が纏まれば帰って構わない。」
ミツヒラはクレの誘いを断りきれず、クレの接待の場に向かうのであった・・・
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