第1322話 汚れた世界

「ローザ、この世界をどう見た?」

「かなり終わっているわね、水も土も死にかけているわ、これじゃ作物は育たないし、こんな水を飲めば普通の人はすぐに身体を壊すはずよ。」

「なるほど、つまり此処では食料と水は貴重という事だな。」

「間違いないわ、今水と食料を見せたら奪いかねないわね。」

「ドベル達を呼ぶか、直接攻撃なら犬獣人達はかなりの戦力になるだろう。」

「現地人に接触するのね。」

「そうしないと話が進まないからな。

ローザ、食料と水は幾らでも用意できる、この世界の信仰心を奪い取れ。」

「わかりました、おとうさんの名をあまねく世界に!」


ローザを中心として侵略が始まる。

「お水をどうぞ。」

「こんな綺麗な水を何処から・・・」

「私が敬っている神様は迷える者を救う慈悲深い御方なのです、生きとし生けるものとして主神ヨシノブを讃えれば、この終末の世界すら救われるでしょう。」

「ヨシノブ?聞いたことの無い神様の名前だね、主神といえばオルデン様じゃないのかい?」

「なんと罪深い名前を言うのでしょう!!オルデンといえば主神ヨシノブの妻サリナを強奪しようとした盗人神!

そのような者を崇めるなどあなたの身にどんな不幸がおとずれるか・・・」

「大袈裟だね、オルデン様を長年信仰しているが不幸な事なんて・・・ゴホッ!ゴホッ!」

ローザと話していた婦人は突如咳き込み始めたかと思うと息がほとんど出来なくなっていた。

「罪深き者よ、オルデンは今や害悪の神、この世界が終末に向かうのはオルデンが数多の神々の怒りをかったからなのです!

御婦人、今ならオルデンへの信仰心を捨て主神ヨシノブを讃えればその身は救われるのです。」

「ゴホッ、ヨシノブ様を讃えれば良いのかい。

この苦しみから救われるのかい?」

「ええ、あなたの身に起きてる事だけではありません、世界が救われるのです。

ですが、まずはあなたの身を救うことが先でしょう。

さあ、ヨシノブ様を讃えるのです。

ヨシノブ様は慈悲深い御方、盗人神を拝んでいた者でも救いの手を差し伸べる寛大な御方なのです。」

ローザの言葉に乗せられるように婦人はヨシノブの名を呼び、祈るのだ。

すると嘘のように苦しみから開放され、息も出来るようになる。


「ヨシノブ様のお陰だ、息ができる苦しくない!」

「それは良かった、多くの人がヨシノブ様を讃えればこの世界は救われるのです、その奇跡の一端を私がお見せしましょう。

皆さんもこちらに来てください。」

ローザは町の人達を連れて町の泉にやってくる。


「主神ヨシノブ様、あなたの敬虔なる娘、ローザが願います。

貴方様の寛大な慈悲によりこの地の水に祝福を!

汚きオルデンの手垢に満ちた水を浄化してください!」

ローザが深く祈りを捧げると泉の水は光り輝き、先程まで腐った臭いを放っていた泉は浄化され以前と変わらぬ綺麗な水に変貌していた。


「これが主神ヨシノブの慈悲です。

皆さん、心して聴いてください、もう一度オルデンを祈れば水は再び腐ります、盗人神を崇める事の無いようにくれぐれも心がけてください。」

ローザは別の地に向かい町を後にするのたった・・・

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