第1316話 負けた神々
アーアの社に滞在するオルデンは引き籠もっていた。
多少なりと回復する神威を髪に回しても生えてこない、神界にある毛生え薬を試すものの今だに回復の兆しが見えない。
当初、生え揃う少しの間引き籠もるつもりだったのだが、その期間は段々と長くなっていた。
「オルデン様、一度お姿をお見せください、生き残った者達も心配しております。」
片腕、片足になったパスだが、今は必死に城の再建に取り組みながら事あるごとにオルデンに引き籠もりを止めるように進言していた。
「パス、私にこのような見窄らしい姿を晒せと言うのか、もう少し待て、神威の回復が足りてないだけだ。
それと他に効能のある薬は無いか探してくるのだ。」
「・・・わかりました、すぐに手配致します。
あとこれが復興プランになります、お目を通してください。」
「わかった見ておこう。」
オルデンは書類を受け取ったのでパスは再び再建の為に現場に向かうのであった。
「はぁ、城とともに貯蓄されていた神威が吹き飛んだのが痛いな、皆の給料を払えばほとんど残らない。」
パスは自分達の世界から上がってくる収支を見ながら頭を悩ませていた。
それなりに成熟した世界を持っているとはいえ、城が吹き飛んだ事もあり管理体制が一度遮断され、信仰心の回収にも影響が出ていた。
それの復旧作業を優先しているのだが、生き残った者達の多くが神威を使い果たしており、自身の回復をしながらだと中々進んでいない、外部に発注するにも地球と関係悪化が仇になり、引き受けてくれるところが少なく、あったとしても足下を見られて高額な要求か、前金で全部支払えといった様子であった。
「パス先輩、私達が信仰心システムの修理を致しましょうか?」
「アーア、やってくれるのか?
知っての通り、前金で渡す予算も無いのだぞ。」
「先輩達の苦難に足下を見たりしませんよ、ただ私達の技術は少し低いので以前のようなシステムは組めませんがそれでも良いのですか?」
「それは仕方無い話だろう、その点については我々が回復してからでも何とでもなる、ひとまずは収入を増やさないと何も出来ない。」
「わかりました、それではすぐに専門の者を送りましょう。」
「助かる、持つべき者は良い後輩だな。」
パスは少し目に涙を浮かべていた、地球と争った事により、長年友好のあった神々からも距離を置かれてしまった、援助、救援すらろくにしてもらえない状況なのにアーアはオルデンの世話から自分達の救援まで色々とやってくれているのだ。
優しい後輩の心に触れ、パスは感極まっていた・・・
「これだな、よしこのアーア様特製装置に交換して・・・」
アーアから派遣された神ヤーヤは破損していた装置を直すのではなく、自分達が作った装置と交換する、それにはオルデンの世界から上がってくる神威を密かに自分達の世界へ転送するように作られていた。
「あとはこのシステムを接続すれば、入ってくる収入を誤魔化せるっと・・・」
用意したシステムは横流し分を差し引いた収入が表示されるようになっており、一目で横流しがバレない仕組みとなっていた。
「これで俺の給料も回復するかな・・・
最近赤字続きでボーナスも無くなったしな、減給もそろそろ止めてもらわないとローンも払えなくなる。」
ヤーヤはため息と愚痴を吐きながら、修理が終わったと報告に向かうのであった・・・
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