第696話 おもちゃ箱

リョウが訓練所で散ったあと、俺達は居間に戻って来ていた。

「ハルノブくん、どうだ、君へのおもちゃだぞ。」

マックスは持ってきたおもちゃをハルノブに見せるが、ハルノブ自身はあまり興味が無いのか、触ろうとしなかった。


「悪いなマックス、あとで遊ぶかも知れないけど、今は興味がないみたいだ。」

俺は申し訳ない気持ちになる、折角貰ったのだから少しぐらい遊んでくれたらマックスの顔も立つのだが、親の心子知らず、ハルノブは興味がないようだった。


「甘いのよ、ハルくんがその程度のおもちゃで喜ぶ筈が無いのよ。」

シモは胸を張り自慢気にマックスに話しかける。

「シモちゃん、その程度と言うがこれは王都1の職人が作った物だぞ。」

「たかが王都程度なのよ、ハルくんに相応しいのは世界一なのよ。」

シモがハルノブのおもちゃ箱を持ってくる。

するとハルノブは嬉しそうにおもちゃ箱から積み木を取り出す。


「なっ、同じような物なのに何が違う!」

「これは日本から取り寄せたハルくんのためだけに作られた積み木なのよ。」

シモはアズサにお願いして源グループのコネを使い、世界一の職人を用意した上、イゾウを使い異世界に招致、ハルノブに会わせ、ハルノブ為だけのおもちゃを用意していたのだった。


「何が違うんだ!」

マックスの目には違いがわからない。


「これは最高の木材を使用して、ハルくんの好み、手の動き方、全てにおいてハルくんに合わせて作られてるのよ。

不特定多数に向けて作られた物なんか相手にならないのよ。」

「な、なんだと、たかがおもちゃにそこまでする必要が・・・」

「うにゅ!その考えが間違っているのよ、大好きな弟の為に最高の物を用意するのは当然のことなのよ。

邪な想いで贈り物をしようとするから相手を想う気持ちが足りないのよ!」

シモの言葉は的を得ていた、マックスはカルラに喜んでほしいだけであり、ハルノブの事を気にしている訳ではない、その事を指摘されたマックスは思わず黙ってしまう。


「シモ、言い過ぎだよ、折角ハルノブの為に用意してくれたんだから、ほら謝りなさい。」

俺はマックスにキツくあたるシモを叱る。

「うにゅ、ごめんなさいなのよ、ちょっと言い過ぎたのよ。でも、贈り物ならハルくんの為を想ってしてほしいのよ。」

シモは謝るものの、主張を変えることは無かった。


「いや、俺の方が悪かった、ハルノブくんが何を欲しがっているかも知らずにただおもちゃを集めただけだった、俺の方こそ謝罪したい。」

マックスはシモに頭を下げる。

「うにゅ、いいのよ、ハルくんに贈り物をしてくれたことは嬉しいのよ、ねっ、カルラ。」

シモはカルラに話をふる。


「ええ、マックス様、弟ハルくんの為にありがとうございます。」

カルラも急に話を振られて、慌てるもののお礼を述べる。

「カルラさん。」

マックスが喜びの表情を浮かべる中、俺がハルノブのおもちゃ箱を整理していると、とんでもない物が出てくる。


9mm拳銃SFP9


もちろんモデルガンではない、弾こそ入ってないものの本物であった。


「誰!ハルノブのおもちゃ箱に拳銃を入れた子は?」

俺は周囲の子供達に聞くと・・・

オットーが目を逸らす。


「オットー前に出てきなさい。」

「あぅ、ごめんなさい。」

「なんで拳銃をおもちゃ箱に入れたか教えてくれるかな?」

「ハルくんが俺の懐にあった拳銃を持っちゃって返してくれなくなって・・・

でも、すぐに弾抜いたから安全だし、いいかなって・・・」

「駄目です、実銃を渡すには早すぎます。

これは没収します。」

俺はハルノブのおもちゃ箱から9mm拳銃SFP9を取り上げる。


「ヤー、ぱーぱー、ヤー。」

ハルノブが嫌がる。

「ハルノブ、駄目なものは駄目です。

まだ早い、これはお父さんが預かっておきます。」

「やー、おー、おー!」

ハルノブはオットーを指差している。


「うん、オットーに渡すの?」

「だぁー。」

俺はオットーに渡す。

オットーなら使い方を熟知しているし、元々オットーの物だ、渡すことに問題は無かった。


「オットー、ハルノブに渡さないようにな。」

「はい、ごめんなさい。」

オットーは深く反省しているようだったのでこれ以上強く言うことはしなかった。




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