第676話 新たな客人

俺は滑走路と管制室の建設に入っていた。

当面の管理はフォルサの部下に任せて、オットーが連れてきたイアソン達魔族の子供達が仕事を覚えたら将来的に輸送及び施設の管理を任せる計画となった。

イアソン達は将来的とはいえ、自分たちに期待されていることに喜びを感じていた。


「イアソンくん、焦る必要はないからね。

しっかりと基礎から学んでほしい。

その過程で他の仕事に付きたかったら俺はそれでも構わない。

他の子も同じだからね、なんの遠慮もなく言ってくれたらいいよ。」

「大丈夫です。俺は必ず仕事を覚えてみせる!」

イアソンは決意を感じるいい目をしていた。


「・・・これなら訓練にも耐えれそうだな。

イアソン、少し厳しいが大丈夫か?」

「オットー、俺は魔族だぞ、人族が耐えれた訓練に耐えれない訳がない。」

「それはよかった。その言葉忘れるなよ。」

オットーはニコニコしながらイアソンの肩を叩く。

イアソンがこの言葉に後悔する日はそう遠なかった。


ちゃくちゃくと建築が進む中、クラルが供を連れてやってくる。

「ヨシノブ様、これから宜しくお願いします。」

「クラルさん、少々不便かも知れませんが、なるべく努力したいので必要と思うものは言ってくださいね。」

丁寧に挨拶をするクラルを俺は丁重にもてなす。


「あ、あの・・・お恥ずかしながら、コーラ、もしくは炭酸飲料などありませんか?」

「コーラ?あるけど飲みたいの?」

「お願いします!!」

俺はコーラを呼び出し、コップに入れて提供する。

「あわわ、コーラです、本当にコーラですよ。」

「クラル様落ち着いてください、それよりコーラとは何なのでしょう?

飲み物なのですか?何やらシュワシュワと音がしておりますが?」

出てきたコーラにルエナは首を傾げている。

「コーラはコーラです。

ヨシノブ様いただきます。」

「待ってください、毒見もなさらずにいきなり飲むなんて!」

側付きのメイドが止めようとするがクラルは静止を聞くこともなく飲み始める。


「シュワシュワがいいです!これですよ、コーラです!!コーラなんです。」

クラルの瞳に涙が浮かんでいる。

周囲の者達はいきなり涙を浮かべた事にオロオロしているが、俺はクラルの発言から1つの答えがでた。

「えーと、人払いしてもらえるかな?」

「なぜですか!クラル様に何をするつもりですか!」

俺の言葉に側付きのメイドが睨んでくる。


「マルマいいんです、ヨシノブ様の疑問はもっともですから。

マルマは少し席を外してください。」

クラルはメイド、マルマに下がるように言うが、マルマは納得しない。


「ですが!クラル様に何かありましたら!」

「その時はヨシノブ様に責任を取ってもらいますから大丈夫です。

たぶんお母様もそちらのほうが喜ぶと思いますよ。」

「大丈夫、何もしない、少し聞きたい事があるだけだ。」

「それなら私がいても問題無いはず!」

マルマは食い下がり、出ていこうとしない。

「マルマ、これは大事な話なのです。下がりなさい。」

「クラル様・・・わかりました。失礼致します。」

クラルが厳しく言うことでマルマは渋々部屋から退出する。

それと共にルエナを含めた他の付き人も退出した。


部屋には俺とクラル、そしてファイが残る。

「ファイは・・・まあいいか、一応他言無用だぞ。」

「わかってますよ、それにコーラに気付いたということは、そういうことですよね?」

ファイは地球出身者とも交流がある、予想は簡単だった。


「えーとクラルさん、もしかして転生してきてますか?」

「はい、お気づきの通り、私は元日本人です。」

「そうでしたか、産まれた時から記憶が?」

「はい、ありました。私はクラルであるとともに、日本人、桜川ハツネの記憶も持っています。」

俺は新たな転生者に出会ったのだった。

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