第677話 転生者クラル

「クラルさん、転生の事を知っている人は誰かいるのですか?」

「いえ、誰にも言ってません。

転生を信じてもらえるかわかりませんし、それに魔族には人族を憎む方が多いので、もし人族の転生者だとわかればどんな目にあったか・・・」

クラルの瞳からはこれまでの苦悩を感じるものがあった。


「お疲れさまです、と言っていいのかはわかりませんが、俺の元にいる間は日本とも連絡がとれますけど、誰か連絡を取りたい相手はいますか?」

「連絡がとれるのですか!それなら家族に!お父さんお母さんに連絡したいです。」

クラルは連絡が出来ることの嬉しさに涙を浮かべて迫ってくる。


「落ち着いて、ここでは出来ません。

一度俺達の本拠地に戻ってからになります。

それに電話番号わかりますか?」

「電話番号・・・えーと、自宅は・・・」

クラルは十五年この世界で生きてきていた、元々携帯に入れていた番号を使うだけだった事もあり、自宅の番号も出てこない。

「えっ!そんな・・・思い出さないと・・・たしか・・・」

クラルは青い顔をして必死に思い出そうとしている。

「大丈夫ですよ、そんなに必死にならなくても住所はわかりますか?」

「それなら、秋田県○○市・・町」

「ご家族の名前は?」

「父が桜川カイ、母が桜川ハク、妹が桜川スズです。」

「それだけわかれば大丈夫、日本政府に問い合わせてもいいし、源グループのチカラを借りればすぐに見つかりますよ。」

「お願いします!

学校帰りにトラックにはねられて、そのままだったんです。

先に死んでしまった親不孝者ですけど、お別れぐらい言いたいんです。」

「お別れと言わず今後も交流を取られてもいいんですよ。

俺達には連絡するスベもありますので。」

「ご厚意には感謝します。

ですが、私はリリスの娘、クラルですから。

記憶はありますが、それと同時に母リリスに育てられた思い出もあります。

今更、別れた家族と交流を取り合うなんて・・・」

「難しく考えなくてもいいのでは?

両方とも家族なんですよ。

俺はリリスさんを忘れろなんて言いませんし、桜川の家族を捨てろとも言いません。

両方ともクラルさんに取って大事な人なら仲良くすればいいんです。」

「ヨシノブ様・・・いいのですか?

ワタシ、ワタシ・・・」

クラルが大きく泣き出したので俺はギュッと抱きしめる。

「辛かったでしょ?でも、いいんですよ。

もし誰かがクラルさんを悪く言うなら俺が守ります。

人族?魔族?そんなもの関係無い、クラルさんの気持ちが大事なんですよ。」

「ヨシノブさま・・・わたし、家族を捨てたくない!お父さんお母さんに会いたいよぉぉ・・・」

俺はクラルが落ち着きを取り戻すまで、力強く抱きしめるのだった・・・






「はぁ、またライバルが増えるのですか・・・」

ファイが呆れた目をしながら俺達を見ていた・・・

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