第675話 勧誘

俺がリリスの応対をしている時、オットーは街のスラムを訪れていた。

「魔族と言っても同じような感じなんだな。」

「おい、ガキがこんなところに来てただで済むと思って無いよな。」

ナイフを持った魔族の男がオットーを睨んでいる、

「丁度いい、スラムの子供達は何処に住んでいる?」

「そんなのお前に関係無いだろ、それより身包み置いていきな。」

オットーは男が動き出す前に両足の膝を撃ち抜く。


「ぎゃあ、俺の足が・・・」

「質問しているのは俺だ、サッサと答えろ。」

「いてぇ、いてぇよ。」

「質問に答える気が無いなら、他の奴にするか。」

オットーは男の額に照準を定める。

殺気に気づいた男は慌てだす。

「言うよ!言うから止めてくれ!」

「なら早く言え、おとうさんから貰った服を奪おうとしたお前に慈悲をかけるつもりは無いぞ。」

「待ってくれ!子供達はあの廃墟をねぐらにしている筈だ。」

男が指さした所はいつ崩れるかわからないような建物だった。


「あそこに子供が?」

「そうだ、死んでなければ、何人かガキ共がいるはずだ。」

「そうか、わかった。」

オットーは男の頭を撃ち抜く。

見かけただけで襲いかかるような者を生かすつもりなど無かったのだ。


「だ、だれ?」

オットーが建物の中に入るとシモより小さな女の子が3人ほど寄り添っていた。

「俺はオットー、君たちに未来を示しに来たんだ。」

「未来ですか・・・?」

女の子達は不審な目を向けている、それもそのはず、これまで自分達に近づいて来るのは利用しようとする大人達ばかりだ、はじめて来たばかりの者を信じるほど甘くは無かった。


「まあ、言われても信じれないだろ、ここの代表は何処にいる?」

「今は食料を探しに行ってます・・・」

女の子達は盗んでくるであろう食料を待っていたのだ。

「ここに食料を持ってきた、俺の話を聞いてもらうために先払いさせてもらう。

話を聞くぐらいはしてくれるか?」

女の子は顔を見合わせる。


「話ぐらいなら・・・」

「じゃあ食べながらでいいから聞いてくれ。」

女の子は警戒しながらだが、余程腹が減っていたのだろう。オットーが渡した食料の中にあるパンに齧りついていた。

「ほら水だ、飲め。」

喉につまらせそうにしていたので、オットーは自分が持っている水筒を渡す。

喉につまらせそうにしていた子は慌てるように飲む。

「あれ、ドロ臭くない・・・」

女の子は水すらロクに手に入れることが出来ていなかったのだ、汚れた水でも喉の渇きの為なら仕方なく飲むしかなかったのだ。


「やはり、劣悪な環境のようだ。」

オットーは予想通りの状況を感じていた。


少し暗くなり、少し年上の子供達が戻ってくる。

「メディア、すまない今日は食事抜きになる・・・

誰だ!」

オットーに気づいた男の子は慌てるように警戒し、それに合わせてみんなも警戒を始める。


「落ち着け、俺はオットーお前たちをスカウトしに来た。」

「俺達をスカウトだと?何が目的だ。」

「俺達のおとうさんは子供が飢える事を好まない、俺達の所に来るなら腹が減ることはない。」

「よくわからないな、それで俺達に何をさせるつもりなんだ?」

「それは適正に合わせてになるが、仕事なら溢れるほどある。」

「そんな事を言って、俺達を売る気だろ!」

「お前たちを売ってもたいした金にならんだろ?

なんでそんな端金を稼ぐ必要がある。

俺達が目指すのはおとうさんの元で子供が飢えない世界を創る事だ。」


メディアと呼ばれた女の子は男の子の裾を引っ張り。

「お兄ちゃん、この人ウソ言ってない・・・」

「メディア本当なのか?」

メディアはクビをコクコクとうなずく。


「わかった、お前についていこう。

俺はイアソン、もう一度名前を聞いていいか?」

「ああ、オットーだ、だが何故簡単に決めたか聞いていいか?」

「このメディアには人のウソを見抜くチカラがあるんだ、つまりオットーが俺を騙すつもりが無いことがわかった。

それならついていった方がみんなにも良い暮らしをさせられる。」

「ここよりは良い暮らしが出来ることは間違いない。

まずは屋敷に行こうか、ここにいる子供はこれだけか?」

「いや、まだ15人ほどいる。」

「ならば、揃うまで待とうか、ほら、イアソンも食べておけ。」

オットーは渡した食料を指差し、食べるように促す。

「ありがとう。」

「礼にはおよばん、これからは仲間になるのだからな。」

オットーは子供達が揃うのを待ち、連れて帰るのだった。


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