第661話 魔族領

「リョウ、基地の事は任せたぞ。」

「おう、出来れば爺さんもと言いたいが・・・」

「残念、こっちが手薄になるからね、アキラさんは残ってもらうよ。」

リョウは肩を落としている。


今回の魔族領に向う為に、シモを含めて戦える者が多く行くことになる。

そのために最終兵器であるアキラには基地に残ってもらうことにしていた。


「しかし、よく爺さんがシモちゃんと離れることを了承したな?」

「ハルノブがアキラさんの名前を呼びかけたからな、ちゃんと呼んでもらうまで離れんとかいってたぞ。」

「・・・ヨソの子供という認識はあるのだろうか?」

「お前が子作りすればいいだけだ、相手は沢山いるだろ?」

「高校生相手だぞ、手が出せるか。」

「ふーん、じゃあ卒業したらになるのか。」

「・・・上げ足を取らないでもらおう。」

「サッサと結婚してしまえ。」

「あーもう、お前こそサッサと行って帰ってこい。

それと、気をつけろよ、シモちゃんがいるとはいえ相手は魔族だ、油断禁物だぞ。」

リョウは誤魔化すように話を変える。


「ああ、油断しないようにするよ、それに子供達も厳重警戒のようだし、余程じゃないと大丈夫だろう。」

「うにゅ!シモがおとうさんを守るのよ。」

シモは俺の背中に飛び乗り元気よく宣言する。


「ヨシノブ、ちゃんとシモちゃんの手綱を握れよ。

じゃないと魔族達が死滅しかねん。」

「にゅ!リョウ兄は失礼なのよ、敵対しない者を斬らないのよ。

敵対者は微塵切りなのよ。」

シモは勇者物語の舞台に行けることが嬉しいのかテンションが高かった。


こうして俺は魔王に会うために魔族領に向かうのだった。


最初に訪れたのはルーカス商会魔族領支店だった。

この店はフォルサから護衛をつけられ、商売をしていた。


「随分繁盛しているみたいだね。」

俺はレジに多数の人が並んでいる店内を見て、店長を任されている、オキに話しかけた。

「あっ、ヨシノブさん、来てたんですか!」

「こっちの方に用事が出来たからね、魔族相手の商売だけど上手くいってる?」

「最初は脅してくる人がいたりして大変でしたけど、その都度店を閉めて、商売止めると言えば、皆さんが脅してきた人を倒してくれましたので、今は大丈夫ですよ。」

「それで店内が落ち着いているのか。」

「はい、それにフォルサ様が派遣してくださった護衛の方々も目を光らせてくれてますから、今は大丈夫です。

ただ、1つ問題がありまして・・・」

「何かな?」

「輸送の問題で商品の欠品が多いのです、ヨシノブさんなんとかなりませんか?」


ルーカス商会は自身の船団にて輸送を行っており、この世界での輸送は多く運べない難点もある。


その上、魔族領店では、魔族領内から商品を求めて集まって来ており、購入制限をかけても数が行き渡っていなかった。


「ひとまず、倉庫を一杯にしようか、それで乗り切ってもらうしかないかな、倉庫と人足を用意してもらえる?」

「お願いします!」

オキは深く頭を下げたあと・・・


「港にある、空き倉庫を全部抑えて!人足は大至急募集して!人足をしてくれた人は給金の他に1つ商品を買える権利を与えると伝えてください!」

オキは部下に指示を出す。

その指示はこの機に大量に商品を仕入れてやろうとする商人の欲をみた。


「いい性格でなによりだよ、オキさん。」

「褒め言葉として受け取りますよ、それに品物を欲しているのは魔族の方々ですから、すぐに準備ができますよ。」


オキの言葉通り、街中から人足をするために港に人々が集まってくる。

中には女、子供の姿も見受けられる。


「え、えーと、これが全部人足なの?」

「人足ですね、倉庫も全て空きましたのでこれより商品を運ばさせてもらいます。

ヨシノブさんは艦内でゆっくりなさってください。

艦内から運ぶのは正社員で行いますのでご安心を。」

オキは部下に指示を与え、次々と運び出していく。

港に置くと群がるように人が品物を持ち倉庫に運んでいく。


「盗まれたりしないのか?」

「大丈夫ですよ、盗んだら今後買い物が出来なくしますし、そもそも店を閉めると伝えてますからね、お互いが相互に監視して盗めなくなってますよ。」

オキは胸をはって答える。

そして、夜遅くまで商品を運び出していくのだった・・・

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