第627話 事故
アシタの槍が前輪に当たり、カルラが乗る車は転倒していた。
「な、何があったの・・・みんなケガは無い?」
「俺は大丈夫・・・おい、フランツ、大丈夫か!」
運転をしていたアルバートから叫ぶような声が聞こえる。
「大丈夫じゃないね、少し派手に切ってる、誰かポーション無い?」
助手席に座っていたフランツは落ち着いたように言うが、アルバートの声からかなりの重傷なのは理解出来ていた。
「アルバート、一先ずフランツを外に、ポーションは私が探すわ。」
後部座席に座っていたカルラの方が荷物を置いていた後ろに近い、横転した車内でカルラはポーションを探す。
「いたっ、私もケガか・・・折れて無ければ良いんだけど。」
車内を探す途中、身体を動かすと右足に激痛が走る。
しかし、動きを止めるわけにはいかない、カルラは這いながらも荷物からポーションを見つける。
「無事なのは一本か・・・アルバート、ポーションがあったわ、早くフランツに。」
「おう、ってカルラ!足が曲っているぞ!」
「あら、痛いと思ったわ、それより早くフランツにポーションをあげて!」
「わかった、だけどカルラ変に動くな、俺が助けるから。」
アルバートはカルラが心配ながらもより重傷なフランツにポーションを届けに向かう。
「フランツ、飲めるか?」
「大丈夫、それよりカルラも重傷なんだろ、これはカルラに。」
「お前の方が危ない、先に傷をふさげ!カルラは大丈夫だ!」
「わかった、ありがとう。
アルバートは早くカルラを助けてあげて。」
「すぐに助けるさ。」
アルバートはポーションを渡すとカルラを助けに車内に戻って行くのだった。
カルラを助け出したあと、アルバートはカルラの足に添え木を当て簡易ながら手当を行う。
「痛い、アルバート痛いって!」
「我慢しろ!今フランツが車を調べているから、ポーションがあと一本あれば痛みは取れるぞ。」
「あったらいいけど、たぶん無いわよ。」
カルラの言葉の通り、ポーションは見つからなかったが代わりに転倒の原因となった槍が見つかる。
「槍?これが前輪に当たったのか?」
アルバートが町を見るが距離は充分にある、槍が届く距離とは思えなかった。
「まずいわ、アルバート、早くこの場を離れないと。」
「カルラどうした?」
「槍を投げたのが敵兵ならすぐにここに敵が来るわ。
フランツ、アルバート、手持ちで使える武器だけ持って車と荷物を破壊して!おとうさんの武器を敵に渡すわけにはいかないの。」
「わかった、フランツ、カルラを連れてなるべく離れろ。
俺は車を爆破してから合流する。」
「わかった、カルラ肩を貸すから早く離れるよ。」
「アルバート、無理はだめよ。おとうさんの命令は無事に帰ることだからね。」
「骨折したやつが何を言う、まあ怒られるのはカルラだけにしないとな。」
アルバートは軽く笑っていた。
「行くよ、カルラ。」
血を流しすぎて少しふらつくフランツと足を折ったカルラの動きは悪い、少しずつ離れて行くが追手が来ればすぐに捕まるだろう。
「さて、お仕事をしますかね。」
アルバートは車内にあった機関銃、弾薬などなるべく多くの武器を車の後ろにあった森に持っていき、車には手榴弾を使った簡易なトラップを仕掛ける。
アルバートは一人、追手を引き付けるために敵と戦うつもりだった。
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