第628話 カルラ逃走中

カルラとフランツの歩みは遅い、だがアルバートが合流してくる事は無かった。

「あのバカ・・・」

「どうしたのカルラ?」

「アルバートのヤツ戦う気よ。」

「えっ、装備も少ないのに・・・」

「私のせいよ、私の足が折れているから逃げれないと予想したのよ。」

カルラは唇を噛みしめ悔しそうにする。


「フランツ、私を置いて先にズルさんの陣に走ってもらえないかな?」

「カルラを置いていけないよ!」

「このままだと、二人とも無駄死によ、それなら救援を求める方に賭けたいわ。

フランツもケガをしたばかりで辛いと思うけど、走ってもらえない?」

「僕の事はいいよ!それよりカルラはどうするのさ!」

「私はそこの林の中に隠れているわ、幸いこの暗さよ、女の子一人見つかりにくいと思わない?」

「でも・・・」

「フランツ、覚悟を決めなさい!貴方もおとうさんの子でしょ、生き残る為に最善を尽くすの。」


「わかった、カルラも生き残る為に最善を尽くしてね!」

「わかってるわよ、ハルくんに会うために死んだりなんか出来ないわ。

そうだ、これを持っていって、たぶんマックスなら私の緊急事態だと信じてくれるわ。」

カルラは自分の髪を一房切り落とす。


「カルラ何を!」

「フランツが素早く信じてもらえないと、私もアルバートも終わりなの。

いい、これをマックスに見せたらわかると言えば、ズルさんに信じてもらえると思う。」

「・・・わかった、行ってぐる。」

フランツの目に涙が浮かんでいる、カルラが渡してきた髪が遺髪のように見えたのだった。


「泣いてる暇があるなら走りなさい!

貴方が頑張る時なのよ!」

カルラの言葉を聞いてフランツは全力で走り始めた。

自身がふらつく身体のを押してでもすべき事の為に全力疾走を行うのだ。


「頼んだわよ、フランツ。

さて、私も隠れないと・・・」

カルラは足を引き摺りながら、林の中へ身を隠すために向かうのだった。



暗闇に覆われる林の中、一人でいると不安な気持ちになってくる。

「はあ、フランツに厳しい事言ったけど、言った当人がこれじゃね・・・」

カルラは不安な気持ちから一人つぶやく。


カルラ自身、男達のような訓練は受けていない。

覚えていたのは事務的な事ばかりだ、今手に持つ拳銃だって、撃ったことなんて数えるぐらいだった。

「フランツが間に合わない時は・・・」

カルラは自分の頭に拳銃を当てる、イザというときに備えて練習したのだ。


フランツには命を大事になんて言ったものの、カルラは捕まったあとの事を考えれば命を絶つ選択が正しいと思っていた・・・

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