第598話 アキラ起動

「おじいちゃん、大変なのよ、結婚式を邪魔されたのよ。」

シモはアキラに訴えかける。


「ふむ、じゃがあの程度、ヨシノブの修業に丁度良いじゃろ、あやつも対処ぐらいできるであろう。」

アキラは当初傍観し、ヨシノブやリョウに対処させるつもりであった。


「ダメなのよ、おとうさんは結婚式の最中なのよ。

おとうさんが式場から出たら結婚式が失敗で、別の花嫁さんが現れて・・・

失敗したらお嫁さんは不幸になるって聞いたのよ、おかあさんが不幸なのは嫌なのよ。」

シモはどこからか偏った知識を得ていた。


「大丈夫じゃって・・・」

「ダメなのよ!おかあさんが不幸なのはダメなのよ。おじいちゃんが動かないならシモがやるのよ。

敵がいるのに動かないおじいちゃんなんて嫌いなのよ!」

シモの言葉がアキラに刺さる。


「シモちゃんが嫌いじゃと・・・」

「おかあさんを不幸にする人は嫌いなのよ、ハルくんもそう言っているのよ。」

シモはハルノブを抱えてアキラに見せる、アキラからするとハルノブの表情も心無しか寂しそうに感じた。

そしてシモはハルノブを背負う。

シモとしてはアキラに任せる気はなくなっていたのだ。

ハルノブを背負い、戦闘に入るつもりだった。


「シモちゃん、大丈夫じゃ、じいじがちゃんと始末しておくからな。

ワシはサリナさんには不幸になってほしい訳じゃないんじゃ。」

「うにゅ?結婚式を守ってくれるのよ?」

「そうじゃ、ヨシノブの為にじゃなく、サリナさんの為に頑張るからな、嫌いなんて言わないでくれ。」

「うにゅ、守ってくれるならいいのよ。

ハルくんも頑張れって言ってるのよ。」

シモは瞳に溜めた涙を拭う。


「・・・さて、どこの馬鹿か知らぬがワシを追い詰めた報いはさせてやる。」

アキラが刀を抜き、空にいる天使を睨む。

「ハエの分際でワシの孫を悲しませるとは万死に値する。死して悔いるがよい。」

アキラは刀に闘気を込める、リョウですら今まで感じたことがないぐらいに強大な力であった。


「やべぇ、ジジイが本気だ、ヘルマンすぐに航空隊を逃がせ!巻き込まれるぞ!」

「ローラ!各機に連絡、全速離脱を行え!」

リョウはアキラの気配がヤバい事にいち早く気付き、言葉を受けたヘルマンはすぐに通達を回す。

何とかエーリヒ達の離脱は間に合ったのだ。


「桐谷流奥義、桜吹雪」

アキラの剣撃は空を埋め尽くす。玄武の上空にいた全ての物が斬り刻まれ堕ちてくる。

細切れにされた血肉は風に吹かれ舞い散る桜吹雪の様子に似ていた・・・

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