第597話 空中戦

「ほれ、また一体撃墜。」

トーマスは次々に天使を撃墜していく。

速さで勝る戦闘機についていける天使はおらず、撃墜数だけが上がっていった。


「おお、信仰心を失いそうだ。」

トーマスは次の天使を機関砲で撃墜しながら呟く。

「トーマスさん、天使を崇拝しているのですか?」

「エーリヒくん、私の国では神の下僕として神聖視されているんだよ。」

「神の下僕が神聖ですか?面白い冗談ですね。」

「君達の感覚とは少し違うみたいだね。っと!」

トーマスは神聖視していると言う割にはアッサリ撃墜していく。


「トーマスさん、本当に神聖視しているんですか?」

「敵に情けをかける気はない。」

キッパリ言い切る。

信仰心と敵を討つことは違うと割り切っていたのだ。


「まあ、無理なら地上で待っててください。僕達が始末をつけますから。」

「子供に任せて呑気に待っているなんて出来ないな。

なに地球の神様は優しいからな懺悔をすれば許してくれるさ。」


「トーマスさん、エーリヒ、お喋りはそれぐらいにして、緊急事態です、回避に集中してください!」

地上の管制室にいるローラから慌てたような通信が入る。

「ローラ何があった!」

「アキラさんが地上より剣撃を放ちます、付近の戦闘機は即座に離脱を!」

その通信にエーリヒは背筋が凍る思いをする。


「了解、全機即座に離脱、剣撃の来ない空域での戦闘を行え。」

エーリヒは即座に航空隊に指示を出し、離脱を開始する。


「どうしたエーリヒ!」

トーマスは理解出来ていなかった。

「トーマスさん、早く逃げないと撃ち落とされます。」

「撃ち落とされる?これほど圧勝しているのにか?

もしかして新手が来たのか?」

「新手・・・には違いありませんが一応味方です。

味方の攻撃に当たる事になります。」

「了解だが、そんなに慌てなくても簡単に当たったりしないだろ?」

トーマスはアキラの危険度を知らなかった。


「いいから、全速離脱してください。」

トーマスはエーリヒの切羽詰まった声に半信半疑ながら大人しく従うのだった。

最後尾だった二人が戦域から離れた瞬間、無数の剣撃が網の目のように放たれ、天使の細切れが完成したのだった。

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