第599話 ハルノブを狙って

「アキラさん、半端ねぇよ・・・」

俺達は改めてアキラの非常識な強さを目の当たりにする。

「じいちゃんの本気初めて見たかも・・・」

リョウもあまりの光景に言葉が出ないようだった。


「凄いのよ、おじいちゃん凄いのよ。

ハルくんも見てたのよ。」

シモだけが単純に喜んでいた。


「あれがアキラの力か・・・アーア様が恐れるだけはある・・・

だが、赤子と離れた今ならバレずに拐える。」


ヲーヲは姿を消し、ハルノブを拐うスキを見ていた。 

ヲーヲの神の中でも気配を消すことに優れている、

本気で隠れればアーアとて見つけることが出来ないと自負していた。


現在、天使の陽動も有り、人の意識は空に向いている。

その上、アキラもハルノブから離れた、今は幼女が背負っているだけだ。

これなら気配を消さずとも拐えそうだが、ヲーヲは慎重に気配を消し、一歩ずつ近づき、ハルノブに手が届く・・・


「何を勝手にハルくんに触ろうとしているのよ。」

触れる直前で背負っていた幼女が振り返る。


気配を消していたのになぜ!

ヲーヲは驚きの声を我慢し一度離れるが・・・

ボトッ!

さっき立っていた所に手が落ちている。


よく見るとヲーヲの伸ばしていた右手が無い。

「ぐわぁぁぁぁ!」

後からくる激痛に思わず声が漏れる。

それと同時に気配を消すことも出来なくなっていた。


「なぜだ!なぜ私の気配がバレたのだ!」

「シモの間合いに入って気づかない訳が無いのよ。

どこの誰か知らないけど、勝手にハルくんを触ったらダメなのよ。

触るならお手々を洗ってからなのよ。」


ここでヲーヲは気づいた、この幼女が強いのは認めよう、だがまだ自分が敵対者だと気づいていない、今なら逃げる事も可能だと。


「これはすみません、あまりの可愛さに少しだけ触りたくなってしまいまして・・・」

「うにゅ!ハルくんが可愛過ぎるのよ、それは仕方ない話なのよ。」

シモはハルノブを褒められた気になり、上機嫌になる。


「はい、申し訳ございませんでした、それでは私はこれで・・・」

ヲーヲは一度撤退して仕切り直そうとしていた。


「待てよ不審者。シモ、コイツを逃がすなよ。コイツは怪しすぎる。」

しかし、そこに空へ上がることを禁じられているルーデルが現れる、戦闘に参加できない為にハルノブの様子を見ていたのだった。


「ルーデル、どうしたのよ?この人はハルくんの可愛さにやられたのよ?」

シモは首を傾げる。

「コイツはシモが斬るまで全く姿が見えなかった、つまり何かの術を使ってハルくんに何かしようとしたに決まっている。」

「うにゅ!!ハルくんに攻撃をしようとしたのよ!それは許せない大罪なのよ!」

「ち、ちがいます、少し触ろうとしただけで・・・」

流れが変わりシモから殺気を感じるのでヲーヲは必死に自身を弁護する。


「触ろうとしただけの奴が腕を斬られて、冷静に下る訳が無い、痛みに悶えるか、斬ったことを責めるかするだろう。

そのどちらもしないということは、それなりの訓練を受けているやつだろ。

シモ、動けなくして誰の手のものか吐かせる。」

「うにゅ!」

シモがルーデルの言葉に刀を振るう。


「その距離で当たるか・・・」

ヲーヲは避けようとするがその時には両手両足が斬り落ちていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る