第563話 ギルドの崩壊

多くの冒険者が騎士団の手により捕縛された。


そして、厳しい取調べの結果、高位冒険者の多くがギルドの命令を受けて大なり小なり、国の調査を行っていることが発覚した。


この結果にマインズ王国の政府は驚きを隠せなかった。

今まで不可侵であり、互いに協調していたと思っていた組織が実は他国の回し者だったのだ。


ルーズはこの一件で国内での冒険者の活動の停止、冒険者の特権としていた町の自由入場も禁止とした。

また、冒険者に出していた依頼の受け皿として騎士団、または近くの兵舎に出すように呼びかける。


そして騎士達は安い金額で依頼をこなす。

今の騎士団が求める物は金額ではない、子供達の喜ぶ顔が見たくて、魔物討伐に挑むのだ。

贅沢品の依頼達成率は低下したが代わりに魔物の駆除、村の護衛など命に関わる依頼は優先的に行われていく、安全という意味では冒険者に任せていた時よりも格段に安全となったのだった。


国内での騎士団の人気は揺るがぬ物になっていく。

その傍らでかつて冒険者だった者は職を失う。


竜の翼の三人、マッチョ、リリル、パナスはギルドと関わりが少なく、罰金刑のみで釈放された。

ギルティはギルドにかなり深く関わっていた為に釈放の見込みは無かった。

「パナス!マッチョ!」

「「リリル」」

釈放された三人は無事を喜ぶ。

特にパナスとリリルは幼馴染ということもあり

互いに抱き合い再会を喜ぶ。


そして、近くの喫茶店で今後について話し合いを行なう。


「マッチョはこれからどうするの?」

リリルはマッチョの斬り落とされた右腕を見ながら質問する。

「ああ、この状態だからな冒険者は引退だな。」

「行く宛はあるの?」

「片腕とはいえ、力に自信はあるからな、力仕事ならいくらかあるだろう。

それよりお前たちはどうする?」

「どうしようかな、冒険者は続けられなそうだし・・・

ギルティは出てこれないの?」

リリルはマッチョに聞いてみる、囚われていた牢屋は男女別になっていた為にギルティの情報はあまり入っていなかったのだ。


「・・・あいつはもうダメだ、どうやらギルドが情報を漏洩している事を知っててやっていたようだ、俺が最後に見たときは過酷な取調べで廃人状態になっていた。」

「私達が罰金刑で済んだのは奇跡みたいね・・・」

リリルは冷や汗が流れる。

実際知らなかったとはいえ、パーティで行った事もあった。

取調べでされた幾つかの質問で引っ掛かれば、外に出てこれなかったのだろう。


「ねぇ、リリル、故郷に帰れないかな?」

パナスは行く宛が無いこともあり、故郷の田舎に帰ることを提案する。

「帰るのもいいんだけど、私達元冒険者は身分証を手にしないと街から出れないよ。」

今までは冒険者証があればどの街にも入ることが出来たが、これからは別の身分証を提示しなくてはいけない。

だがそれにはまずこの街の市民権をとって、その後申請しないといけないが、まず市民権を得るのに何年かかかりそうだった。


「じゃあ、どうするの。

市民権が無いとマトモな働き口なんて・・・」

パナスの表情は暗い、市民権が無い者の働き口なんてロクな所がない、簡単に想像がつくのは売春婦だがリリルとしてもそこにだけは行きたくなかった。

パナスとリリル二人は暗い表情でため息をつく・・・


「あー、リリルさん!お久しぶりです!」

リリルは声をかけられ、振り返る。

そこには一人の少女が立っていた。

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