第535話 サンプルを集めるが・・・

研究者達はルーカス商会から来た商人、ワムと話をしていた。

「もっと色々な鉱物を見せてほしい。」

「いや、植物のサンプルをくれないか?珍しい物があればなおいいんだが。」

「まて、以前依頼していた魔道具のカタログはどうなっている?」

3人の研究者は目を血走らせてワムにはなしかけている。


「お、落ち着いて下さい、ご依頼は一人ずつお伺いしますから。」

3人が必死なのには理由があった、ヨシノブが用意してくれただけだと、納得のいかなくなった3人はゲンザイが代表してヨシノブに嘆願、その結果週に1回ルーカス商会から人を呼んで依頼を出せるようになったのだった。

そして、2回目の今日、最初の依頼に出した物と、次の依頼の為に必死になっているのだった。


「えーと、前回頼まれた物でゲンザイ様のご依頼の魔道具のカタログです、そしてモトキ様のご依頼の鉱物、これは市販されているものを幾つかご用意させてもらいました。

あとコウ様のご依頼のサンプルですが、このような物でよろしいでしょうか?」

ゲンザイにカタログ、モトキに鉱石、コウに幾つかの草花を用意していた

ワムからすると何故このような物を依頼するのかよくわからなかったが、他でもないヨシノブの家からの依頼だ。

たとえどのようなわからない事でも誠実に対応するだけだった。


「これは鉄か、いや何か違う気がする・・・」

「見たこともない植物だ、成分を調べ無いと。」

モトキとコウは受け取ったサンプルを手に部屋に戻っていく。


「ワム殿、この魔道具は手に入るのか?」

ゲンザイは水を生み出す魔道具を指差し、質問をしていた。

「手に入りますが、少々お高いですよ。

一度確認なされては?」

ワムは購入するにしてもヨシノブに確認したほうがいいのではないかと質問を返す。

「ううむ、そうだな、私はこの世界の金は無いからな・・・

済まないがヨシノブさんに連絡を取ってもらえないだろうか?」

ゲンザイは見張りに来ているパウルに質問する。


「居候のクセに金まで・・・いえ、おとうさんに確認してきます。」

日を追うごとに研究者への子供達の感情が悪くなっていっていた。


研究者達は部屋に籠もり、自身の研究を行い、食事の時間から始まり全て自分のタイミングを重視しており、細かいことでも迷惑をかけ続けている。

子供達からしては邪魔でしかなかった。


ゲンザイはパウルが少し漏らした言葉にハッとする。

研究に集中してしまっていたが非常に不味い事態になっている事に気付いた。

その夜にモトキとコウを集めて話し合う事にする。


「モトキ、コウ、非常に不味い状況になっていると気付いているか?」

「なんだゲンザイ、今頃か?」

モトキはゲンザイが今更気づいたことに呆れている。

「モトキは気付いていたのか?」

「当然だ。こんなの最初から問題しかない。」

「それなら最初に言ってくれれば対応出来たのに。」

ゲンザイはここまで関係が悪化する前ならなんとかなるかと考えていた。

しかし、すでにパウルのこちらを見る目は冷たく、マトモに相手をしてくれるとは思わなかった。


「まあ、俺に任せておけ。」

「大丈夫なのか?」

「大丈夫だ、俺の研究の為にもなんとかしなくてはいけないからな。」

モトキは大きく笑う。


モトキは人間性に難があっても、研究に対しては貪欲だ、きっとどんな手を使ってでも自身の研究の為にチカラを振るうだろう。


こういった時には頼もしく感じるのだった。

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