第503話 お礼

「これは陛下、ヨシノブの屋敷にお越しでしたか。」

マックスが部屋に入るなりルーズに気付き臣下の礼をとる。

「おお、マックス。

お主の裁き見事である、そして、被災地の民を思い、迅速な行動、まさに騎士の鏡である。」

ルーズはマックスを褒め称える。

「勿体無きお言葉・・・しかし、私が動けるのもヨシノブのお陰であります。

礼はヨシノブにすべきと心得ます。」

マックスは一つ学んだ事があった、自身を誇るよりヨシノブを持ち上げた方がカルラの反応がいい事に・・・

ならば対外的に話すときにヨシノブを持ち上げれば必然とカルラの機嫌が良くなり、自分に笑顔を向ける回数が増えると。

「うむ、ヨシノブには礼をするのは勿論だが、マックスのその謙虚さは他の貴族にも見習わせるべきだな。」

ルーズはマックスの返事に満足したのか大きく笑うのだった。


「マックス、荷物の積み込みは終わったのか?」

「もう少しかかるが、だが水もいるのか?」

マックスは積み込む荷物に飲料水があることを不思議に思う、水などそこらの川や井戸で汲めばいいと考えている。


「灰で井戸や川の水が使えないかもしれないからね、あるに越したことは無いと思うよ。」

俺の言葉にマックスは首を傾げつつも反論はしない、後ろにカルラが見ているのせいだろう。


「しかし、ヨシノブお主にどれほどの礼をすれば良いかがわからんのだが、何か欲しいものは無いのか?」

ルーズは頭を悩ます問題である、お礼について聞いてみる事にした、もしヨシノブの希望があるのならそれを用意しようと思っていたのだった。


「欲しいものですか?

・・・特に無いのですが、それだと困るんですよね?」

「困るな、金銭でも宝物でも好きに要求してくれて構わないぞ。」

「宝物と言われてもよくわかりませんし。」

「それなら宝物庫を見に来るか?ヨシノブに好きな物を選ばせるほうが早そうだ。」

「おお、宝物庫ですか、それは目の保養になりそうですね。」

俺は興味を惹かれる、長年の国家が持つ宝物だ、きっと素晴らしいものがあるのだろう。

欲しいとはあまり思わないが見るぐらいならと好奇心が刺激される。


「興味が湧いたようで何よりだ、王宮に来たときにでも案内しよう。」

「是非お願いします。」

「ちゃんと欲しい物を見つけてくれよ。」

ルーズは見るだけで満足しそうな俺に釘を刺してくるのだった。

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