第499話 ハルノブ親衛隊
「アキラさん!」
俺は庭に出るとそこには天狗に稽古をつけているアキラの姿があった。
「なんじゃヨシノブ、稽古に来たのか?」
「ち、違います、ハルノブの親衛隊を作っているとか聞いたから来たのですが・・・」
俺は疲れ果て精魂尽き、倒れている天狗を見る。
「うむ、お前のように油断ばかりする奴にカワイイ孫は任せられん、じゃからワシの手で護衛を作ってやろうとな。
さあ、立て!それでも八大天狗と名乗る者か!」
一人の天狗が立ち上がりアキラに挑む。
「参るぞ・・・ぐはっ!」
三合も打ち合わないままに、地面に叩きのめされる。
「その程度でハルノブを護れるというのか!」
「天狗さん、別に無理にハルノブを護ってもらわなくとも・・・」
俺は天狗を見かねて声をかけるが・・・
「御父君、ハルノブ様に何かあれば我が一族は皆殺しに合うのです、必ずや御守いたしますので。」
声をかけた天狗からは決死の覚悟が感じられる。
どうやら、アキラに脅されているようだった。
「それにですな、あのクソジジイに一泡吹かすにはハルノブ様に一声かけてもらうのが1番みたいですからな。」
天狗はニヤリと笑う。
どうやらやられたままで終わるつもりはないようだった。
「ハルノブを変な事に巻き込まないでくれよ。」
「ご安心を、あれほど可愛い御方を害するつもりなどございません、ただジジイに一言『意地悪なジジイは嫌い』と言ってもらえればそれだけで充分にございます。」
「それはアキラさんには堪えそうだけど、無理に言わすのもなぁ。」
「ハルノブ様の側で信頼を得れば一声ぐらい頂けるかと。」
天狗はハルノブを可愛がり信頼を得るつもりだった。
「なるほど、でも無理はしないようにね。」
俺はその場を離れることにする。
きっとハルノブが大きくなる頃には強い仲間が増えているのだろうなと遠い目をするのだった。
「ヨシノブ待て。」
俺が離れる前にアキラから声がかかる。
振り向くと倒れた天狗の上に座るアキラが見えた。
「なんですか?それと天狗さんから降りてあげてください。」
「うむ、お前に渡すものがあってな・・・ほれ。」
アキラは刀を俺の方に放り投げる。
「アキラさんこれは?」
「以前の詫びじゃ、言っておったじゃろ、刀を用意すると。」
「たしかに言ってましたね・・・って!」
俺は鯉口を切り、刀を少し鞘から抜くと息が詰まる、吸い込まれるような刀身に汗が吹き出す。
「凄かろう、元の刀は虎徹じゃ。」
「元はって今は違うのですか?」
「うむ、少々加工した後にそれを使って3匹ほど餌にしたからのぅ、充分に神力を吸っておる。
これならお主でも神ともやり合えるであろう。」
「やり合う気は無いのですけど・・・」
「甘いことを言うな!やらねば殺られるそれが世の常じゃ、全てのモノを斬る気でおらねば大事な者は護れぬぞ。」
たしかにアキラは暴力的ではあるが、護ろうとすれば護れる力を持っている、俺自身足りていないのはいつでも戦う気持ちなのかも知れない。
アキラの言葉に気付かされるところはあるものの・・・
アキラのようにはなるまいと思う自分もいるのだった。
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