第498話 平和な時を

王都にいる貴族達は恐怖に怯えていたが俺の周りは至って平和だった。

「ヘルマン、ドワーフの子供は見つかった?」

「ええ、見つかりました、現在少々お勉強をしてもらっています、奴隷解放は教育が済んだご褒美としたいのですがよろしいですか?」

「すぐに解放してもいいと思うけど、ヘルマンがそれが正しいと思うならそれでいいよ。」

「ありがとうございます、ヒビキさんから教えてもらいミスリルが作れるようになれば、あらためておとうさんの前に連れてきますね。」

「適性もあるみたいだから、無理はさせないようにね。」

「はい。大丈夫です。」

ヘルマンは笑顔で答えて部屋を後にする。


「ヨシノブ、研究所の奴らがすまないな。」

リョウが謝ってきた、ミスリルの話はリョウの預かり知らない処から来たのだった。

「別に構わないよ、リョウが気にする話でも無いだろ・・・

いや、リョウ気にしろ、そして、俺を屋敷から出る協力をするのだ。」

俺はふと考える、リョウを味方につければ屋敷から出られるのでは無いかと。


「気にしないでおくよ。

お前は屋敷に引き籠もれ。」

リョウはアッサリと俺を見捨てる。


「リョウ!自由の無い友を可哀想だと思わないのか!」

「まったく。

そもそも家庭を持った男に自由があるはずがない。

家族の為に尽くすのだな。」

「家族の為に尽くしたくても動けないのだよ。」

「諦めろ、そもそも俺が協力したところで抜け出せるはずがない。」

リョウは窓の外を見る。


俺はリョウが見ている先を見るとするとそこには鬼だけじゃなく、様々な日本の妖怪の姿が見えた。

「・・・リョウ、俺の眼が悪くなったのかな?

鬼以外の妖怪の姿が見えるのだけど。」

「それが現実だ。」

「なんで!!どっから来たの!」

「お前の娘に聞け、百鬼夜行するのよ〜って酒天と話してたんだからな。」

「シモか、仕方ない、話を聞きに行ってみるか。」 

俺はシモに会いに行くのだった。


居間に行くとサリナの横にシモとハルノブがいる。

「シモ、少し聞きたい事があるんだけどいいかい?」

「にゅ?なになのよ?」

「お外の妖怪さん達はどうしたのかな?」

「あれは新しくお友達になったのよ!

酒天がお友達を紹介してくれたのよ、みんないい子でハルくんも守ってくれると言ってくれたのよ。」

シモは嬉しそうに話す、どうしてこの子は人外とすぐに仲良くなってくるのだろう。

俺は少し不思議に思う。


「そうだ、おとうさんにも紹介するのよ、イタくん恥ずかしがってないで出てくるのよ。」

シモの言葉にイタチのような動物が姿を現す。

「これが鎌鼬のイタくん、いつ如何なる時もハルくんを守ってくれるのよ。」

イタくんは頭を下げる。

「いつ如何なる時もってイタくんが大変じゃないかな?」

イタくんは首を振っている。


「ハルくんもたくさん魔力が溢れているから、イタくんも居心地がいいそうなのよ。」

「それならいいけど、でも、イタくんに戦闘力あるの?」

「それは大丈夫なのよ、風を刃にできるのよ、ちゃんとおじいちゃんにも訓練受けたから完璧なのよ。」

イタくんはアキラとの修行を思い出したのか少し震えている。


「なるほど、アキラさんの教育済みか・・・」

俺はイタくんの戦闘力に疑いを持つことはなくなった。

アキラさんがハルくんの護衛の許可を出したのだ、生半可な強さでは無いだろう。

「それで、そのアキラさんは?」

「お外でお稽古しているのよ。

おじいちゃん、ハルくんの親衛隊作るって張り切っていたのよ。」

俺には嫌な予感しかしない、俺はアキラに会うために外に急ぐのだった。

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