第490話 見舞い?

「カルラさん!ここで会えるとはまさに運命てすね!」

マックスは満面の笑みを浮かべる。

「え、えーと、家の前に来られたら会える可能性はあるような・・・」

カルラは少し苦笑いを浮かべる。


「そんなことより、お怪我は大丈夫ですか!」

「はい、怪我は無事に治りました。ご心配かけました。」

カルラの中では自分の怪我の事など既に頭に無く、怪我といえばヨシノブの怪我しか思いついていなかった。

二人の会話は何処かズレていた。


「それはよかった!怪我をしたと気づいてから心配でたまりませんでしたぞ。」

「私も心配でした・・・

あっ、いけない、玄関先でお話するのも良くないですね。

さあ、屋敷の中にどうぞ、おとうさんもいますよ。」

「かたじけない、お前らも行儀よく待っているのだぞ。」

マックスは屋敷の外に団員を置いて、一人屋敷に入ろうとする。

当然の如く、騎士団からブーイングがあがる。


「皆さんもお茶を用意しますので、中へどうぞ。」

カルラは団員にも声をかけて中に入るように促す、それをマックスは苦々しく見ていた。


「マックス様どうなさいましたか?」

「いや、何でもない。」

「何やら表情が浮かばれないご様子でしたが?」

「いや、カルラさんが団員を気遣っている姿を見て少しな。」

「折角訪ねて来ていただいた団員さんに、中でお茶ぐらいはださせてもらいますよ?」

カルラからすれば知り合いになっている騎士団員をこのまま放置するなんて考えは浮かんでいなかった。


「カルラさんのご配慮に感謝致します。お前ら大人しくしておくのだぞ。」

マックスは団員と別れ一人ヨシノブの元に案内されるのだった。


「おとうさん、マックス様がお見舞いに来てくれましたよ。」

「マックスがお見舞い?」

俺は訝しむ、こいつは俺の見舞いに来るとは思えなかった。

カルラはお茶の用意をしに部屋から下がる。


「ヨシノブ、怪我をしていたのか?」

「少しねって、怪我の事も知らないのに見舞いに来たのか?」

「俺が見舞いに来たのはカルラさんだ、ズムの街で血の匂いを感じたからな。」

「血の匂いって・・・確かにカルラは殴られて怪我はしたけど。」


「何処のやつだ!既にやったんだろうな?」

「ズムの住人だな、事情があってやってない、ズムの街の治安維持をしていたガラハとか言うやつと一緒にタカってきたから、その仲間か何かだとは思うが・・・」

「ガラハか、わかった。」

マックスは指名手配にする事を心に決めたのだった。


それから、二人で話していると、カルラがお茶を入れたあと俺の横に座った。


「マックスが裁判するのか!」

俺はマックスが裁判官と聞いて驚く、頭のおかしいマックスに公平な裁判はできるか不安しか無かった。


「何を驚く、これでも一軍を預かる身、たかが罪人を裁くぐらい簡単だ。」

マックスは自慢気に自身の胸を叩く、視線がカルラにいっている点で誰にアピールをしているかは丸わかりだった。


「マックス様は武勇だけでなく、公平な裁きも出来るのですね。

こういうのを知勇兼備の将というのですか?」

カルラは話を聞いて、マックスを持ち上げるように話す。


「おお、正しくそのとおりですな、私は陛下から多方面で頼られる漢なのです。」

マックスはカルラに褒められた気持ちになり、最大に嬉しそうだった。

「さすがマックス様ですね。

ですがそのように頼られるマックス様がこちらでノンビリなさってよろしいのでしょうか?

やはり職務がお忙しいのでは?」

「あはは、どれ程忙しくともカルラさんに会う時間ならいくらでも作れますとも!」

「それはいけません!

お仕事を終わらせずに私に会いに来られても・・・

会いに来るならお仕事を終わらせてからにしてください。

そうじゃ無いと時間が気になってしまいます。」

「はっ!そ、それは!」

マックスは時間が気になるという点だけを抜き出して記憶する。

つまり、仕事が終われば時間を気にせず会えるのだと。

「それにお仕事を頑張る男の人ってカッコいいですよね。」


「そうですな、私としたことが、不肖マックス、これより職務に戻ってくる。」

「はい、頑張ってくださいね。」

「うおぉぉぉぉ!!」

マックスは勢いよく屋敷を出ていった。


犯罪者達の命が尽きる日は早そうだった。













マックスが帰ったあと、女の子の会話


「ねえ、カルラ、何でマックスさんにあんな事言ったの?ちょっと冷たかったよね?」

リミは食器を片付けながらカルラと話していた。

「だって、おとうさんのお見舞いに来てくれたと思って喜んだのにひどくない?」

カルラも片付けをしながら不満を口にする。

カルラはマックスがヨシノブの事を気にしてくれていた事を喜んだのにそれがぬか喜びだったので少し冷たくあしらったのだ。


「あんまり、酷いことしたら、変な事になりそうだからね、程々にね。」

「わかってるよ〜、でも、仕事に戻るように言っただけだから大丈夫でしょ。」

「うーん、大丈夫なのかな?」

リミには判断出来ないことだった、常識的なら問題ないのだが・・・

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