第488話 ルーズ王来訪

「ヨシノブさん、おじゃましますね。」

俺の家にイルーゼさんがやってきた。

「イルーゼさん、リーナちゃんは今ハルノブの面倒をみてくれていますよ。」

「あら、あの子も小さい子の面倒をみれるぐらいになったのですね。

ご迷惑をかけてないかしら?」

「ハルノブも懐いてますからこちらも助かっています。」

「お世辞でも娘の成長を感じれるのは嬉しいですね。」

俺とイルーゼが話しているとサリナがお茶を出してくる。

「ありがとう、サリナさん。

サリナさんも少しいいかしら?」


「はい、何でしょう?」

サリナは俺の横に座る。


「あらためて、うちの貴族があなた達に迷惑をかけてしまって申し訳ありません。」

イルーゼは深く頭を下げる。

「いえ、イルーゼさんが悪い訳ではありませんから頭を上げてください。」

「それでも、国の者が失礼をしたのなら頭を下げるのが国のトップの努めですから。

勿論、当事者には重い処分をいたしますが、私達王族としては変わらぬお付き合いをさせてもらいたいのです。」

「わかってます、私としてもこの件でマインズ王国と不必要に争う気はありませんし、まして、王族の方と争う気なんて毛頭ありません。」


「それは良かったです。」

イルーゼはパッと明るい表情を浮かべる。

「そうだ、サリナ、日本から取寄せた各種化粧品をイルーゼさんにも試してあげれないか?」

俺は女性陣からの圧力もあり、暇な時間を用いて日本製の化粧品に魔力をこめ、特注品を作り上げていた。


「私は構いませんけど、いいんですか?」

「向こうが先に頭を下げてくれたんだ、こちらも何かしないとね。

イルーゼさんならきっと喜んでくれると思うし。」

「そうですね、イルーゼさんこちらに、折角ですから、お風呂に入っていろいろ試してみませんか?」

「いいですわね、是非お願いしたいです。」

サリナはイルーゼを連れて大浴場に向かっていった。



「ヨシノブ、ワシとしても頭を下げよう。」

イルーゼさんに流れを取られて遅れながらもルーズが頭を下げる。

「イルーゼさんが頭を下げてくれましたからいいですよ。

政治的に難しく考えるのは止めましょう。」

「良いのか?」

「ええ、当事者に罰を与えるならそれでいいですよ。」

「済まない。」

「それより折角来たのですから、私達も1杯やりませんか?いい酒があるんです。」

「それは良いな、ヨシノブの持つ酒はドワーフが懇願する程の酒と聞く、是非飲ませてほしい。」

俺はルーズは女性達が風呂から出てくるまで酒を酌み交わした。


「ヨシノブ、これはいい酒だな。」

ルーズは一口呑むとその味わいに驚く、王の立場である以上、様々な銘酒を呑んできたがこれは別格であった。


「わかりますか?これは日本でも中々手に入らない、銘酒と言われる酒なんですよ。」

俺は秘蔵の酒を持ってきていた、日本酒の銘酒と呼ばれる酒にアマテラスの加護をのせた特別品だ。


ちなみに日本酒以外の酒にはアマテラスの加護が入らなかったのはアマテラスさんのこだわりだろうか。

こうして出来た酒はまろやかで口当たりがよく、その優しい味わいからいくらでも呑めてしまう酒であった。


「うむ、いくらでも呑めてしまうな。」

「さあ、どんどんいきましょう。カルラ、おつまみお願いできるかな?」

「はい、でも呑みすぎないでくださいね。」

「大丈夫だって。」

「もう・・・」

カルラは少し不満そうにするがおツマミを持ってきてくれる。


こうして出来上がったのが酔っ払い二人だった。

「ほら〜ルーズ呑めよ。」

「ヨシノブこそ、呑みが足らんぞぉ〜」

「まだまだぁ〜」

肩を組み、気分良く呑み続けていく・・・


「だから言ったのに・・・」

女性達が風呂から帰る前に酔い潰れた二人をカルラは介抱しつつため息をつく。



こうして、俺とマインズ王家との関係は悪化することなく無事に解決することになるのだった。

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