第484話 ゲブル
「ビザ侯爵、大人しく捕縛されよ。」
レンの元に兵士が押し掛けてくる。
「なっ!無礼であるぞ!わが家は建国の英雄であるぞ!貴様ら末端の兵ごときに捕縛されるいわれはない!」
「それは既に過去の話だ、貴殿には陛下より命令が下され、国内に騒ぎを起こした、反逆者として取り締る事が決定しておる。」
「なっ!反逆者だと!
俺はそんな真似はしていない、陛下に意見することが罪と言うのか!」
「お見苦しい事を。
貴殿がルクス様を王位につけ、縁戚として権威を振るおうとしていた話は調べがついている、また、横領、脱税、許可無く他国への侵攻等様々な容疑がある。」
「くっ、そ、そんな真似はしていない。」
「申開きは裁判で行う事です。」
「裁判か・・・良かろう、私の無実を証明してみせる。」
レンは裁判に自信があった。
何せ長年多くの裁判官に賄賂を贈り、懇意にしてきているのだ。
自身に不都合な判決が出るわけがない。
いっそ無実を確定して以後責められないようにしようとすら考えていた。
そしてレンは王都にある貴族の屋敷を軟禁できるよう改築した場所に連れて行かれる。
そこには既に多くの貴族が集められている。
よく見ると自身の派閥の者ばかりだった。
「レン侯爵殿、大丈夫なのか?」
「バラル子爵、大丈夫ですよ、裁判官は我らの味方でございます。
暫くは不便かと思いますがこれを機に清廉な身体になりましょうぞ。」
周囲の貴族も落ち着いているレンを見て安心していた。
「ならば、ひとまず政務から離れて休養といきますかな。」
「それがいい、せっかく皆が集まっているのだ、交流を深めようではないか。」
レンは楽観視しており、集められた者達と宴を行い、気楽に過ごしていた。
バオアの街では・・・
「ゲブルと言ったな、その食料を売ってくれるとか・・・」
「ああ、だが難民に行き渡るようにしてもらいたい。」
ゲブルは食料を集めてジャミとロッコの元に着いたときには二人は既に討ち取られていた。
仇討ちを行うにもレックスは既に街に行っている。
ゲブルは考えた結果、ビザ家領内に逃げた住民を追いルマがいるバオアに来ていた、ジャミが救おうとしていた住民に自身が手に入れた食料を渡すのが最後の命令と考えていた。
その結果、バオアに避難した住民に届けるために統治するルマに食料を渡すのだった。
「私も彼らに渡すつもりだ、貴殿が大量に譲ってくれて助かった。
感謝する。
どうだろう、このまま私に仕官してくれないか?」
ルマはゲブルに頭を下げる。
「頭をお上げ下さい、実は私は・・・」
ゲブルは自身の事情をルマに話した。
「なるほど、ティエラ連邦の軍人だったのか。」
「はい、長年戦場で戦ってましたので、仕官の話は・・・」
「そんなのは関係ない、貴殿は軍人としてするべき事をしていただけだ。
私が欲しいのは貴殿自身である、領民を思い、亡き主君への厚い忠誠心、貴殿は誇るべき漢である。」
「高い評価感謝します、ですが今は仕官する気は・・・」
ゲブルは頭を下げる。
「いや、私の気がはやりすぎた、だが気持ちの整理がついたら私の元に来てほしい、いつでも仕官の門は開いてあるからな。」
ルマはゲブルに手を差し伸べ二人は固く握手を交わすのだった。
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