第477話 ジャブの街
ジャミは噴火した山をジャブの街で見ることになっていた。
「や、やまが・・・っ!いかん全員急ぎ街から脱出せよ!急げ!」
ジャミは着の身着のまま、馬に乗り、街から出ようとする。
その際も・・・
「皆、山から離れろ!急げ!」
住人に声をかけながら街から脱出をはかったのだった。
外に出るとロッコが一軍を率いて迎えに来ていた。
「ジャミ様、ご無事で何よりにございます。」
「ロッコ助かったが、現状はどうなっておる。」
ジャミは逃げることに専念した為に状況がわかっていなかった。
「私もよくわかってはおりませんが、クシズ山から火が噴き出しており、ズムの街の方向に流れているのが見えました。」
「ならば、ジャブの街は大丈夫ということか?」
「わかりません、ですので離れていることが賢明かと。」
「わかった、ロッコの言うとおりにしよう。」
「はっ、我らの陣にて暫し滞在なされるがよろしいかと。」
ロッコは少し離れたところにジャミと逃げてきた住人を保護する。
「ふぅ、一息つけたわ、ロッコ感謝するぞ。」
用意された陣幕で水を飲み一息つける。
「誠に無事で何よりにございます。」
「して、ロッコよ、ここの食料はどれ程ある?」
「申し上げにくいのですが、避難してきた住人を含めると3日も持てばよいかと。」
「足らんな・・・」
「はい。」
「ロッコ、ジャブの街の食糧庫に兵を出し、こちらに持ってこさせろ。」
「しかし、ジャブの街は・・・」
この時点ではまだマグマは街に届いておらず、恐怖にさえ耐えれば何とかなりそうだった。
「危険なのは承知の上だ、兵から決死隊を募り運ばせよ。」
「はっ!」
「あとは・・・アーガのレックス准将にも使者を出せ、業腹ではあるが非常時だ、住民の救済に食料と住むところの準備を頼め。」
「奴が素直に聞くでしょうか?」
「難しいかも知れんが、今は権力争いをしているときではない。
まずは住民の生活を第一と考えよ。」
ジャミの指示の下、ロッコはすぐに動き出す。
「ゲブルよ、そなたにはジャブの街から食料を運んでもらいたい。」
「ジャブの街は既に火の中では?」
「まだ燃えてはおらん、確かにそなたの言うとおり、火が迫っているのは間違いない、だがその状況で任務にあたれるのは勇猛なゲブル、そなたしかおらんのだ。」
「わかりました、部下を連れてすぐに参りましょう。」
ゲブルは自身の腹心達を連れてジャブに向かう、彼の行動次第で食料難になるかどうかの瀬戸際であった。
ゲブルが街に着くと住民の多くが逃げ出しており閑散としていたがこんな時でも裕福そうな家には荒されたあとが見受けられた。
「食料が奪われてしまえば大変な事になる、急げ!」
ゲブルが食糧庫に着くと扉を破り運び出して馬車に積み込んでいる者達がいる。
「盗賊が・・・全員抜剣!いつでも行けるようにしておけ。」
「ゲブル隊長、すぐに向かわないのでありますか?」
「すぐに倒してしまえば、積み込む手間がかかるじゃねえか。」
ゲブルは賊が馬車に積み込むのを待っていた。
「今だ、やれ!」
賊が食料を運び出そうとした瞬間、ゲブルは全軍に攻撃を命じる。
「なっ!だ、誰だ!」
「誰だじゃねえよ、これは国が管理している食料だ、盗み出しているのはお前らの方だろ。」
「いや、これは、燃える前に俺達が有効活用しようとしただけだ!」
「物は言いようだが、それが通ると思っちゃいないだろ?」
「くっ、簡単にやられてたまるか!者ども迎え討て!」
叫ぶ男にゲブルは一気に間合いを詰めて剣で突き刺す。
「ほら、どうした?威勢のいいのは終わりか?」
「がぁ、がはっ!」
「賊に告ぐ、お前らの罪はこの男が償った、人夫として暫し働くなら目溢しをしてやる。
目溢ししてほしい者は武器を捨てろ!」
ゲブルの言葉に戦意を失っていた全員が武器を捨てる。
「ならば、こちらの馬車にも満タンにしろ、素直に従えば兵士としての待遇で迎えてやろう。」
ゲブルは盗賊達を使い、自分達が持ってきていた馬車にも食料を積み込むの、これにより予定より多くの食料を手にして戻ることができたのだった。
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