第461話 輸送

「だ、騙しましたね!」

シリアは何故か船に乗りつつ叫んでいる。

「いいからちゃっちゃと乗れ!」

後ろから茨木童子が

棍棒でつついている。


なんだろう、光景を見ているとこちらが人攫いになっているような気がする。


「デーニッツ、あれで大丈夫なのかな?」

「問題ありません、僕達の任務はルクス兄の元に送ることです。

彼等の快適性など必要ありません。」

デーニッツはハッキリといいきる。


「それはそうだが・・」

「おとうさんはおかあさんとゆっくり養生していてください。」

デーニッツはそう言うと颯爽と船に乗り込んでいく。


沖に出て少しすると艦内に放送が流れる。

「諸君、私は艦長のデーニッツだ、貴殿らは今まで好き勝手に言っていたようだが、この船では違う。

我々に逆らうなら海に放り込む。

命の保証など無いと思え。」

デーニッツの放送にざわめきが起きる。

「大人しくしている者に危害は加えたりしない。貴殿らの賢明な判断に期待する。」

デーニッツは艦内放送を終える。


「茨木童子さん、逆らう者に容赦はいりません、シリアさん以外なら連絡無しで海に捨ててください。」

「わかった、見つけ次第捨てておこう。」


しかし、デーニッツの警告も虚しくその日の夜には規制線を無視して指定区域以外に侵入するものがいた。

「あんな食いもんじゃ足りねぇよな。」

「そうだぜ、それに甘味がもっとほしい。」

「あれは上手いからな、見つけても独り占めするなよ。」

「お前こそ分けろよ。」


ドン!


「イテッ!何だよ壁か・・・っ!」

「お前よそ見しすぎだ、ってば、ぱけもの!」

男達は見回り中の鬼にぶつかる。


「ここは侵入禁止エリアだ。警告に従わず入って来るとはその命いらないと見える。」

「ひぃ!ち、違うんです、少し間違って・・・」

「そんな言い訳を信じるものがいると思うか?」

「・・・い、いや、そ、そうだ、俺達はズムの街の住人だぞ!」

「うん?知っているが何か?」

「シリア様や、ルクス様から危害を加えないように言われているんだろ!

その命令に従えよ。」

「何故、シリアやルクスの命令に従わねばならん、我等が従うは姫様である。

その姫様の命令を遂行することが我等の使命。」

「ひ、ひめさまって、シリア様のことだろ、シリア様に確認を取ってくれ!」

「無礼者が!姫様とあのような下衆を同じにするとは!貴様万死に値する!」

男達はあまりの殺気に震え立つ。


「落ち着け、無駄に殺気を漲らせるな、デーニッツ殿達の睡眠の邪魔になる。」

「茨木童子、しかし、こやつらがな。」

「ゴミの言うことなど無視しろ、お前たちの刑罰はよく朝行う。部屋に監禁しておけ。」

「はっ!」

鬼は茨木童子の指示で男達を監禁する。




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