第462話 シリアの要求

翌朝、男達の家族が騒ぎ出す。

夜から姿を見ていないのだった。


そして、食料を探しに行った事情を知るものがシリアに訴えるのだった。

「シリア様、昨晩食料を探しに行った者の姿が見えないのです、たぶんですが、あの者達に捕まってしまったのかと・・・」

「あれ程言われていたのになんて真似を。」

「申し訳ありません、ですが、何もすることの無い船内、せめて食べ物ぐらいは好きに食べさせてほしいという気持ちをくんでくれませんか。」

「ですが・・・いえ、それより彼等の身が心配ですね、すぐにデーニッツの元に参りましょう。」

「ありがとうございます。」

シリアはすぐにデーニッツの所に向かう。


「デーニッツ、貴方は私の領民を捕縛し、何をなさるつもりですか!」

「宣言通り、船から降りてもらうだけです。」

「ここは海上ですよ!」

「だからなんですか?

彼等は艦長たる私の命令を聞かず、侵入禁止エリアに侵入した犯罪者です。」

デーニッツはハッキリと拒絶する。


「こちらが下手に出ていれば・・・仕方ありませんね。

シリア・ビザが命じます。

ただちに領民を開放して、船の指揮は私が行います。」

「・・・はい?」

デーニッツは一瞬シリアの言葉がわからなかった。

「理解できないのでしょうか?これだから子供は嫌いなんです。

ビザ侯爵家長女シリア・ビザの命令だと言っているのです。

言うことを聞いていればいいのです。」

シリアはため息をこぼしながら、当然のことかのように伝える。

「ビザ侯爵家でしたか?何故その家の言うことを聞かなければならないのですか?」

「なっ!ビザ侯爵家を知らないのですか!」


「ルクス兄の婚約者としか理解出来ませんね、というか婚約者程度でしょ?結婚もしてないのに偉そうにしないでもらえますか?」

「私がのみならずルクス様まで侮辱するつもりですか!」

「ルクス兄はルクス兄だよ、王子の肩書きがあるのは知ってるけど、別の国ですし、本人もこだわって無いみたいですので。」

「この子供は!!」

シリアはデーニッツを叩こうとするが、デーニッツの後ろにいた茨木童子に腕を掴まれる。

「いたい!いたい!離しなさい!離して!」

茨木童子としては軽く握っただけだがシリアにしてはかなり痛かったようだ。

「このような真似をして、ただで済むと思っているのですか!」

「済まないの?」

「当たり前です、このことはルクス様を通してヨシノブさんにも知らせます!」


「・・・シリアさん、海の上は何があるかわからないものですよ。

たとえば、甲板にいた人が誤って海に落ちてしまうとかね。」

「な、何が言いたいのですか!」

「察しの悪い人ですね、僕達が我慢を止めたら貴女を海に突き落とすと言っているのです。」


「そんなこと・・・」

「出来ないと思いますか?確かにシリアさんが行方不明になれば、多少怒られるとは思いますがそれぐらいです。

ルクス兄の相手はすぐに見つかると思いますし。」

「なっ!何を言っているのですか・・・」


「そもそも、あんたは何様のつもりだ?おとうさんは人がいいから誰でも助けようとするけど、僕は違うよ。

家族以外が何処で死んでも気にはしない。

黙って船に転がっているなら、ルクス兄の所までは連れて行く。

だけど口を挟むなら容赦する気は無いよ。」

漏れ出るデーニッツの殺意にシリアは震えが来るのだった。

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